ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

Anita Desai の "Clear Light of Day"

仕事が超多忙になり、"2666" は小休止。そこで今日は3年前だったか、「インドの光と影」と題してアマゾンに投稿、その後削除したレビューでお茶を濁しておこう。1980年のブッカー賞最終候補作である。ちなみに、アニタ・デサイは周知のとおり、キラン・デサ…

"2666" Part 2 雑感(2)

多忙につきカタツムリのペースになってしまったが、何とか第2分冊の半分までたどり着いた。全体としてもやっと半分を超えたところ。やはりこれは大変な作品である。 この第4部はミステリというかクライム・ノヴェル風なので、Kate Atkinson の "When Will …

"2666" Part 2 雑感(1)

いよいよ第2分冊に突入。"The Part about the Crimes" という章題のとおり、今まで読んだ範囲はおおむね犯罪記録の連続だ。昨日の雑感で、「Roberto Bolano は…ミステリも書けたのではないか」と述べたばかりだが、何のことはない、もう既に本書で実践して…

"2666" Part 1 雑感(4)

やっと第3部を読みおえた。これで第1分冊が終わり、分量的には全体の3分の1を超えたことになるが、テーマはまだよく分からない。これはひとつには、今のところ、それぞれの章がほぼ独立した物語になっていることにもよる。 第3部の主人公は、ニューヨー…

"2666" Part 1 雑感(3)

第1部は「普通のリアリズム」主体だったが、第2部に入ると「フィクションによる現実の浸食」が始まる。むろん第1部でも、登場人物の見た夢の中の物語や想像した光景が紹介されたり、出会った相手の体験談が語られたりする。この劇中劇形式のダイグレッシ…

"2666" Part 1 雑感(2)

何とか第2部まで読み進んだ。第1分冊の3分の2だが、全体としてはやっと4分の1を超えたところ。まだまだ先は長いが、英語的にはけっこう簡単なので、時間のある人なら5日くらいで読み切れるのではないか。 昨日の雑感で、本書は「普通のリアリズム」に…

"2666" Part 1 雑感(1)

覚悟を決めて Roberto Bolano の "2666" を読みはじめた。なにしろ900ページを超える大作である。ボケ、多忙、その他の事情で、もっぱら電車の中でしか読書に時間が割けない今、はたしていつ読みおわることかと心配だが、ぼくが手にとったのは3分冊のペイパ…

Kate Atkinson の “When Will There Be Good News?”(2)

さすがに最後はミステリだなと思った。幼児を連れた女が失踪するのが主筋だが、真相はなかなか明かされない。ごく当然の話で、そのほうがサスペンスが盛りあがるに決まっている。…とは分かっていても、それまで各人物同士の接触をその過去と重ねあわせながら…

Kate Atkinson の “When Will There Be Good News?”(1)

何とか読み終えた。今まで2回にわたって書いた雑感の続きだが、簡単にレビューをまとめておこう。When Will There Be Good News?: (Jackson Brodie)作者: Kate Atkinson出版社/メーカー: Black Swan発売日: 2009/01/02メディア: ペーパーバック クリック: 4…

“When Will There Be Good News?” 雑感(2)

相変わらずというか、ますます快調。これはもうムチャクチャ面白い本である。こんな本を読んでいると、つくづく宮仕えの身がイヤになる。480ページ近い長編だが、時間のある人ならたぶん2日で読み切れるだろう。 一種のミステリ、正確にはクライム・ノヴェ…

“When Will There Be Good News?” 雑感(1)

去年の話題作のひとつ、Kate Atkinson の "When Will There Be Good News?" を読みはじめた。ガーディアン紙やタイム誌、パブリシャーズ・ウィークリー誌、ニューヨーク・タイムズ紙の Janet Maslin などが年間優秀作品に選んでいる本だ。 Kate Atkinson は9…

Sebastian Barry の “The Secret Scripture”(2)

昨日書いたレビューを読みかえしたら、3回の雑感に毛が生えた程度で新しい指摘がほとんどない。何だか奥歯に物のはさまったような「書き方」だが、弁解すると、主人公の老婦人の秘密をばらさないようにするのに手こずったあげく、あんな表現になってしまっ…

Sebastian Barry の “The Secret Scripture”(1)

やっと読み終えた。今まで3回にわたって書いた雑感の続きに過ぎないが、さっそくレビューをまとめておこう。 The Secret Scripture作者: Sebastian Barry出版社/メーカー: Faber & Faber発売日: 2009/01/29メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 4回…

“The Secret Scripture” 雑感(3)

ようやく読了したので、本来ならアマゾンに投稿していたときのようなレビューを書くところだが、今日はもう時間がない。レビュー用のメモのつもりでおしゃべり編を先に続けよう。 「どうやら(主人公の)婦人の過去には重大な秘密が隠されているらしい。それ…

“The Secret Scripture” 雑感(2)

読み進んでいるうちに思い出したのだが、本書はちょうど去年の今ごろ読んだ Maggie O'Farrell の "The Vanishing Act of Esme Lennox" と設定がよく似ている。http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20080115 あちらも主人公の女性が精神病院に長期入院中で、そ…

今年の全米書評家(批評家)協会賞と、 Elizabeth Strout の “Abide with Me”

いささか旧聞に属するが、全米書評家協会賞(全米批評家協会賞)の候補作が発表されている。http://bookcritics.org/news/archive/2008_nbcc_finalists_announced/ ラインナップは次のとおり。 "2666" Roberto Bolano "Home" Marilynne Robinson "The Lazaru…

“The Secret Scripture” 雑感(1)

08年のコスタ賞最優秀作品賞を取った Sebastian Barry の "The Secret Scripture" が手元に届いたので、さっそく読みはじめたが、今のところなかなか快調で好感が持てる。30年以上も精神病院に入院している老婦人の手記を中心に、婦人の様子や妻のことを綴っ…

Karen Kingsbury の “Sunrise”(2)

この本は Sunrise Series の第1作だが、ぼくは去年の夏、2作目の "Summer" のほうを先に読み、しかもそれが初めてふれた Kingsbury の作品だった。当然それだけ「鮮度」がよかったわけだが、その点を差し引いても本書はいささか見劣りがする。http://d.hat…