ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

"Firefly Lane" 雑感(2)

いやはや、ものの見事にハマってしまった。最初は、中学生の娘同士が永遠の友情を誓うなんてホンマかいな、といくぶん斜に構えていたのだが、読めば読むほど面白くなり、あと4分の1となった今では、なるほどこれならベストセラーになるのも当然と納得して…

"Firefly Lane" 雑感(1)

これは今年の1月ごろからだろうか、ニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストで常連となっている本。今もチェックすると、Trade Paperback 部門の第3位にランクインしているが、ハードカバーは去年の2月刊ということで、たぶん当初から好評を博して…

Kate Morton の "The Forgotten Garden"(2)

今もアマゾンUKのフィクション部門をチェックすると、本書はベストセラーリストの25位。去年の夏ごろからずっと100位以内をキープしている。昨日のレビューにも書いたように、圧倒的な物語のパワー、巧妙な伏線、見事な話芸、鮮やかな場面転換、魅惑的な舞…

Kate Morton の "The Forgotten Garden"(1)

仕事の合間にやっと読み終えた。今まで3回の雑感のまとめに過ぎないが、さっそくレビューを書いておこう。The Forgotten Garden作者: Kate Morton出版社/メーカー: Pan Books発売日: 2008/06/06メディア: ペーパーバック購入: 2人 クリック: 8回この商品を…

"The Forgotten Garden" 雑感(3)

案の定、胃カメラを飲んだショックで本は読めなかった。飲む前は不安でたまらず、飲んだあとは…。もう3回目なのに、ちっとも馴れない。今思い出しただけでもぞっとする。まったく、年は取りたくないもんだ。 というわけで、今日は昨日まで読んだ範囲で雑感…

"The Forgotten Garden" 雑感(2)

相変わらず、とても面白い。今のペースだと、あと1日で読み終えられそうだけど、明日は胃カメラを飲むことになっているので、ちょっと無理かな。 本書の美点はいくつもあるが、今日はミーハー的な興味だけ述べておくと、とにかく舞台が最高にいい。コーンウ…

"The Forgotten Garden" 雑感(1)

いやはや、これは面白い! たぶん面白いだろうとは思っていたが、まさかこれほどとは。去年の夏に買ったとき、すぐに読んでおけばよかった。 作者の Kate Morton はオーストラリアの作家で、巻頭の写真を見るかぎり、若くて美人。ま、そんなことはどうでもい…

Amitav Ghosh の "Sea of Poppies"(2)

一昨日の雑感の続きになるが、第3部を読み進んでいるうちに、地主と同じ監房にいる囚人の身の上話が始まったとき、あ、ひょっとしてこの本、完結しないのではないかと思った。普通なら、巻末近くでダイグレッションはありえないからだ。それが今まで同様、…

Amitav Ghosh の "Sea of Poppies"(1)

やっと読みおえた! 昨年のブッカー賞最終候補作のひとつだが、小さな活字がぎっしり詰まって530ページ。しかも難易度の高い単語が続出。だが、こういう作品を読破したときの満足感はまた格別である。昨日まで3回続けた雑感のまとめに過ぎないが、感激のさ…

"Sea of Poppies" 雑感(3)

ううむ、長い! この3連休で何とか読破しようと思ったのに、夕べ『恋の手ほどき』を観ながらワインを飲んだのが敗因で、明日にズレこむことになってしまった。レビューを書けるのは明後日かな。 一昨日の雑感で「悠々たる大河の流れのような筆致」と評した…

"Sea of Poppies" 雑感(2)

今日は夕食までに第2部をかなり読み進んだ。ぼくは1日50ページをノルマにしているので、その倍以上こなせたのがうれしい。しかも、この本の英語はちょっとヘンで、There's a paltan of mems who'd give their last anna to be in your jooties. なんていう…

"Sea of Poppies" 雑感(1)

これも去年のブッカー賞最終候補作のひとつで、最近ようやく安いペイパーバック版が出た。今日は第1部の終わりまで読み進んだが、量的には全体の3分の1なのに、内容としては長大なイントロといったところ。悠々たる大河の流れのような筆致である。 主な舞…

オレンジ賞ロングリスト発表(2009 Orange Prize longlist)

昨日、オレンジ賞のロングリストが発表された。http://www.orangeprize.co.uk/show/feature/orange-prize-2009-longlist 例によって候補作の数が非常に多く、今のところどうも食指が動かない。 ぼくが旧作を読んだことのある作家は Toni Morrison と Marilyn…

Linda Grant の "The Clothes on Their Backs"(2)

去年のブッカー賞関連の本に取り組んだのはこれで5冊目になる。単純なお遊びに過ぎないが、系統別に順位をつけてみると、読者に人生の意味について考えさせるという点では、本書は Joseph O'Neill の "Netherland" に次いで第2位。http://d.hatena.ne.jp/s…

Linda Grant の "The Clothes on Their Backs"(1)

思いのほか早く読了してしまった。昨日の雑感と同じような内容だが、さっそくレビューを書いておこう。The Clothes On Their Backs作者: Linda Grant出版社/メーカー: Virago Press Ltd発売日: 2008/02/07メディア: ペーパーバック クリック: 1回この商品を…

"The Clothes on Their Backs" 雑感

これは周知のとおり去年のブッカー賞最終候補作のひとつで、最近やっとペイパーバック版を入手した。まだ途中までしか読んでいないが、いかにもイギリスの小説らしい味わいで、かなり気に入っている。ぼくが今まで接した候補作の中では、先月読んだ "The Sec…

David Benioff の "City of Thieves"(2)

これは本質的には「文芸エンタメ系」のノリであり、戦争という根本問題について読者の蒙をひらくような作品ではない。が、作者はもともと映画脚本家らしく、ストーリー展開も場面づくりも非常に巧妙で、たしかに映画でも観ているようにぐんぐん引きこまれて…

David Benioff の "City of Thieves"(1)

いやはや、面白かった! 一昨日の雑感ではつい「文芸エンタメ系のノリ」とケチをつけてしまったが、たとえ本質はそうであっても、これだけ面白いと文句を言うほうがおかしい。今年2回目の台詞だが、アレックス賞万歳!City of Thieves作者: David Benioff出…

全米書評家(批評家)協会賞発表(2009 National Book Critics Circle Awards)

ニューヨークの現地時間で3月12日、今年の National Book Critics Circle Awards が発表され、フィクション部門で予想どおり、Roberto Bolano の "2666" が受賞した。2666作者: Roberto Bolano,Natasha Wimmer出版社/メーカー: Farrar Straus & Giroux発売…

"City of Thieves" 雑感

Hillary Jordan の "Mudbound" がとても面白かったので、今度は同じく今年のアレックス賞の受賞作、David Benioff の "City of Thieves" に取りかかった。ありがたいことに、これまたクイクイ読める本で、アレックス賞のレヴェルはいつもながら高いものだと…

Hillary Jordan の "Mudbound"(2)

本書はアレックス賞のほか、一昨日の雑感にも書いたとおり、バーバラ・キングソルヴァーが創設した Bellwether Prize の受賞作でもある。一般にはなじみの薄い賞だが、社会正義の問題を採りあげた新人作家の作品が対象とのこと。ぼくはそれを知ったとき、じ…

Hillary Jordan の "Mudbound"(1)

今年のアレックス賞受賞作のひとつだが、故殿山泰司風に言えば、クイクイ読める本。あまりに面白くて、電車の中だけでなく家に帰ってからも読みふけり、おかげで昨日の雑感の続きを書くまでもなく一気に読了してしまった。 追記:その後、本書は2006年のベル…

"Mudbound" 雑感

今年の全米書評家(批評家)協会賞はどうやら Roberto Bolano の "2666" で決まりのようなので、あとひとつだけ入手している候補作、Elizabeth Strout の "Olive Kitteridge" はとりあえず積ん読。最新のアレックス賞受賞作のひとつ、Hlillary Jordan の "Mu…

Roberto Bolano の "2666"(3)

本書の「あとがき」を読んでさらに分かったのだが、"2666" という題名の意味はぼくだけでなく、誰にとっても謎のようである。何しろボケ気味のぼくのこと、うっかりヒントを見落としたのかと案じていたが、そうではないと知りホッとした。 「あとがき」の筆…

Roberto Bolano の "2666"(2)

ぼくはふだん「原典中心主義者」で、作品の紹介記事は斜め読みだし、序文、あとがきのたぐいもまず読まない。始めに作品ありき、余計な背景知識は鑑賞の妨げになるだけ…と言いたいところだが、要は面倒くさいからだ。が、この "2666" に関しては原則をまげ、…

Roberto Bolano の "2666"(1)

やっとのことでロベルト・ボラーニョの "2666"(2004)を読みおえた。2月18日から10回にわたって連載してきた雑感のまとめに過ぎないが、とりあえずレビューを書いておこう。 2666 (1,2,3)作者:Bolano, RobertoFarrar Straus & GirouxAmazon[☆☆☆☆★★] ひとつ…

"2666" Part 3 雑感(2)

ううむ、困った。あと40ページ足らずで第3分冊を読み終わるというのに、まだ本書のタイトル "2666" の意味が分からない。全体のテーマはたぶんこれだろう、という手がかりはつかんでいるつもりなのだが…。 それはさておき、この第5部は第1部 "The Part ab…

"2666" Part 3 雑感(1)

第3分冊は "The Part about Archimboldi" と題された第5部のみ。当然、第1部に登場した謎のドイツ人ノーベル賞候補作家、Benno von Archimboldi の話になるはずと思ったが、たしかに Hans Reiter というドイツ人が主人公であるものの、待てど暮らせど肝腎…

"2666" Part 2 雑感(4)

いよいよ第3分冊に取りかかったところだが、その感想の前に第2分冊、第4部の続きを書いておこう。 縦糸は大量連続殺人事件だが、真相を明かされてもべつに意外な気はしなかった。たしかに被害者の数は異常に多い。が、その犯行を生んだものは「現象として…

"2666" Part 2 雑感(3)

ようやく第2分冊を読みおえた。次の第3分冊、第5章のタイトルは "The Part about Archimboldi" とあり、どうやら第1部に登場した謎のドイツ人作家の話に戻るようなので、第4章のクライム・ノヴェル編はひとまず終了したものと思われる。 ぼくは前回の雑…