ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

"The Bishop's Man" 雑感(1)

仕事がだいぶ忙しくなってきたが、その合間を縫って Linden MacIntyre の "The Bishop's Man" にボチボチ取りかかった。カナダで最も権威のある文学賞、ギラー賞(The Scotiabank Giller Prize)の昨年の受賞作である。 ギラー賞といえば、ぼくは去年の8月…

Toni Morrison の "A Mercy"(2)

ノーベル賞作家の新作を読むのは、去年のブッカー賞最終候補作に選ばれた J.M. Coetzee の "Summertime" に次いで2冊目だが、出来ばえはこちらのほうがずっといい。雑感にも書いたとおり、『ビラヴド』の記憶はほとんどないものの、これならノーベル賞作家…

Toni Morrison の "A Mercy"(1)

ニューヨーク・タイムズ紙が選んだ一昨年の最優秀作品のひとつ、Toni Morrison の "A Mercy" をやっと読みおえた。さっそく、いつものようにレビューを書いておこう。A Mercy作者: Toni Morrison出版社/メーカー: Vintage発売日: 2009/06/04メディア: マスマ…

"A Mercy" 雑感

職場の農繁期が終わったあと、ボチボチ仕事をしながら同じくボチボチ Toni Morrison の "A Mercy" を読んでいる。ニューヨーク・タイムズ紙が選んだ一昨年の年間最優秀作品のひとつだが、ペイパーバック・リーダーの僕はハードカバーには手が出ず、今ごろに…

Paul Harding の "Tinkers"(2)

じつはこの本もわりと早い段階で結末の予想がついたのだが、今回はさほど気にならなかった。というより、ページをめくる手を思わずとめ、ぼく自身の人生をふりかえることが多く、それが諸般の事情に加えて読了の遅れた原因のひとつである。 おそらく40代くら…

Paul Harding の "Tinkers"(1)

またまた予定より大幅に遅れてしまったが、昨年の米アマゾン年間最優秀作品のひとつ、Paul Harding の "Tinkers" をやっと読みおえた。いつものように、今までの雑感をレビューにまとめておこう。(後日、本書は今年のピューリツァー賞を受賞しました)Tinke…

"Tinkers" 雑感(2)

短めの長編だし、英語の難易度もまあ普通なので、ぼくのような文学ミーハーでも本当は一気に読めるはずなのだが、多忙に加え、最近あれこれ思うことが多く、どうやら愛と死、喪失がテーマらしい本書に接すると、ページをめくる手がふと止まってしまう。前回…

"Tinkers" 雑感(1)

職場の農繁期も先が見えてきたが、連休までは忙しそう。それでも少しずつ何か読まなければと思って、Paul Harding の "Tinkers" に取りかかった。米アマゾンが選んだ09年の年間ベスト10のうち、ペイパーバックで読める数少ない作品のひとつである。 まだいく…

Jayne Anne Phillips の "Lark & Termite"(2)

「生意気なことを言うと、先が見えてしまった」と雑感(1)に書いたが、結局、ほとんど予想どおりの結末だった。「視点が一巡したあとの展開が定石どおりでワンパターン」だし、人物や状況の設定もステロタイプに近い。勘の鈍いぼくでも第2クールの冒頭で…

Jayne Anne Phillips の "Lark & Termite"(1)

多忙その他、諸般の事情で遅れに遅れていた Jayne Anne Phillips の "Lark & Termite" をやっと読みおえた。去年の全米図書賞ならびに全米批評家(書評家)協会賞の最終候補作である。この本については、すでに雑感で言い尽くしたような気もするが、とりあえ…

今年の全米批評家(書評家)協会賞

National Book Critics Circle Award(全米批評家協会賞)の発表があり、候補作は3冊しか読んでいなかったが(うち1冊はあと少し)、その中でイチオシだった去年のブッカー賞受賞作、Hilary Mantel の "Wolf Hall" が見事ダブル受賞に輝いた。 あとの候補…

"Lark & Termite" 雑感(4)

友人から、「農繁期、がんばれ」というメールをもらった。このブログを読んでくれた感想だが、ここでひとまず返信すると、相変わらず貧乏ひまなしですわ。先週末も今日も日ごろの給料ドロボー生活を返上、せっせと仕事に励んでいた。 おかげで遅々として進ま…

"Lark & Termite" 雑感(3)

相変わらずカタツムリくんなので、今日は小説における意外性について。本書の場合、「すべて定石どおりの展開」で、「とてもウェル・メイドなのだが、反面、型破りな面白さはない」という印象はまったく変わらない。が、だからといって本書の価値が減じてい…

"Lark & Termite" 雑感(2)

前回からずいぶん時間がたってしまったが、職場の「農繁期」が佳境に入り、土日も今週もずっと仕事に追われ、読書はほとんどカタツムリくん状態。電車やバスの中でちらちら読むのが精一杯で、われながら情けないほど進まない。 とはいえ、受ける印象はまった…