ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

Paulette Jiles の “The Color of Lightning”(2)

今は今年の英連邦作家賞(Commonwealth Writers' Prize)受賞作、Rana Dasgupta の "Solo" をボチボチ読んでいる。なかなか面白い。もうそろそろ雑感の続きを書くべきところだが、先週読みおえた昨年のギラー賞(Scotiabank Giller Prize)候補作、Paulette …

Gerbrand Bakker の “The Twin”

3日前、出張先で読みおえた本書のレビューを遅まきながら書いておこう。今年の国際IMPACダブリン文学賞受賞作で、初出は2006年、作者はオランダの作家である。The Twin作者: Gerbrand Bakker出版社/メーカー: Vintage Books発売日: 2009/06/01メディア: ペ…

2010年ブッカー賞候補作発表(longlist for Man Booker Prize 2010)

ほかにも書きたいことはあるのだが、昨日ちらっとふれた Christos Tsiolkas の "The Slap" が気になって仕方がないので、改めて今年のブッカー賞のロングリストをながめてみた。http://www.themanbookerprize.com/news/stories/1427 間違いなく同書もふくま…

“Solo”雑感(1)

夕刻、出張から帰ってきた。さっそく、昨日発表された今年のブッカー賞のロングリストを検索してビックリ。なんと、去年の英連邦作家賞(Commonwealth Writers' Prize)受賞作、Christos Tsiolkas の "The Slap" がノミネートされているではないか。今年にな…

“The Twin”雑感 (3)

出張3日目。今日はさしたる仕事もなく、完全にサボりモードで昼過ぎに本書を読みおえた。さっそくレビューを書くべきところだが、何しろケータイしか使えず不便この上ない。昨日の駄文の続きでお茶を濁すことにしよう。 「行間を楽しむ小説」、「深い余韻の…

“The Twin”雑感 (2)

出張2日目。連日の猛暑でかなりバテてきたが、それでも何とか順調に読み進んでいる。 「深い余韻の中に(本書の主人公) Helmer の思いがしみじみとこめられている」と昨日は書いたが、では彼は何を考えているのか。いつも理解を示してくれた亡き母親。頑固で…

“The Twin”雑感 (1)

ほんとうは昨日に引き続き、"The Color of Lightning" の話、とりわけ「平和主義の限界」を取り上げるべきところだが、あいにく今日から出張。またもやケータイを使ってこれを書いている。それゆえ大問題にふれるのは家に帰ってからということにして、今日は…

Paulette Jiles の “The Color of Lightning”(1)

昨日読みおえた昨年のギラー賞(Scotiabank Giller Prize)候補作、Paulette Jiles の "The Color of Lightning" のレビューを書いておこう。ショートリストにも残らなかった作品だが、一般読者のあいだでは本命視されていたという記事をどこかで読んだ憶え…

“The Color of Lightning”雑感(6)

やっと読みおえた! 本来ならさっそくレビューを書くまわりだが、これからジョギングに出かける時間だし、そのあと酒を飲むことにしている。そこで今日は、今までの雑感をちょっと整理するくらいにとどめておこう。 まず、「文学的な深みはさほどでもないが…

“The Color of Lightning”雑感(5)

「歩き読み」のコツは、人とぶつからないようにすることと、何より車の往来に気をつけることだが、いつも通る道の危険な箇所さえ頭にいれておけば、あとは意外に集中して本が読めるものだ。困るのは、本のあいだにはさんでいる読書メモをときどき、いつのま…

“The Color of Lightning”雑感(4)

ぼくの数少ない特技のひとつに「歩き読み」「立ち読み」というのがある。通勤時のバスや電車の中はもちろん、二宮金次郎さんよろしく歩きながら本を読んだり、エスカレーターに乗りながら読んだりする「スゴ技」だ。今日もスーパーのレジに並んでいるとき、…

"“The Color of Lightning”雑感(3)

明日もがんばろう!と書いた直後からおとといはかなり酔っぱらい、昨日は朝寝坊。終日ピッチが上がらないまま、またもや飲んでしまい、結局ろくに本書が読めなかった。「クイクイ読めるタイプの小説」なんて、我ながらよく言ったものだ! 今日は通勤途中のほ…

“The Color of Lightning”雑感(2)

旅行中はまめにこの日記をつけていたのに、日常生活に戻るとたまっていた仕事が襲いかかり、と言うほどでもないが、昨日も出勤。"In Other Rooms, Other Wonders" のレビューに書いたとおり、まさに「禍福はあざなえる縄のごとし」である。 閑話休題。今日に…

Daniyal Mueenuddin の “In Other Rooms, Other Wonders”

旅行中はせっかく頑張って本を読んでいたのに、今日は頭が働かず、終日ぼんやりしていた。ともあれ、おととい読みおえた本書のレビューを書いておこう。雑感(1)でもふれたように、これは去年の全米図書賞最終候補作のひとつで、タイム誌とパブリシャーズ…

“The Color of Lightning”雑感(1)

旅行最終日。昨晩に続いて小樽市内を歩いてまわった。といっても、大林宣彦監督の映画「はるか、ノスタルジィ」のロケ地を探訪するのが主目的で、映画に出てきた丘の上から小樽港を眺めたときは、あ、この景色だ!といたく感激した。 …などとお茶を濁してい…

“In Other Rooms, Other Wonders”雑感 (6)

旅行5日目。富良野〜旭川〜札幌という日程。今日も爆睡モードだったが、砂川SAに到着する寸前に最後の短編を読みおえた。本来ならレビューを書くまわりだが、旅先ということでケータイしか使えず不便この上ない。そこでひとまず、1話だけの簡単な感想を。 …

“In Other Rooms, Other Wonders”雑感 (5)

旅行4日目。網走湖〜銀河・流星の滝〜層雲峡〜然別湖という日程。だんだん疲れがたまってきて、バスの中では爆睡モードだったが、それでもホテルに着いて何とか1話だけ読み進んだ。 この "LiLy" は昨日の "Our Lady of Paris" とほぼ同じくらいの出来ばえ…

“In Other Rooms, Other Wonders”雑感 (4)

旅行3日目。知床五湖〜小清水原生花園〜網走〜サロマ湖という日程。網走市内の「中鮨」で食べたお寿司がとてもおいしかった。 第6話 "Our Lady of Paris" は、今までの本書の流れとしてはかなり異色の短編。舞台がラホールからパリに飛び、主人公もパキス…

“In Other Rooms, Other Wonders”雑感 (3)

旅行2日目。屈斜路湖〜野付半島〜知床峠とめぐってウトロ着。今日はけっこう疲れたが、それでも何とか第5話まで進んだ。昨日独断と偏見で述べた、「平凡な市井の人々の人生における有為転変を淡々と綴った短編集」という感想はまったく変わらない。 ここに…

“In Other Rooms, Other Wonders”雑感 (2)

北海道旅行1日目。阿寒湖〜硫黄山〜摩周湖〜川湯温泉と回るうちに、バスの中で何とか第3話まで読み進んだ。おかげで最初はぴんとこなかった本書の特質も、ようやく見えてきたように思う。これは、平凡な市井の人々の人生における有為転変を淡々と綴った短…

“In Other Rooms, Other Wonders”雑感(1)

明日から4年ぶりに北海道へ旅行に行く。旅行のときに持って出かける本というのは週刊誌の読書特集にでもありそうなテーマだが、ぼくの場合は簡単で、そのとき気の向いたものに手が伸びるだけ。今回は長編を敬遠し、Daniyal Mueenuddin の短編集 "In Other R…

Abraham Verghese の “Cutting for Stone”(2)

これはとにかく650ページを越える大長編なので、読みだしたときは、はて、いつになったら読了できるのやらと危ぶんだものだが、いざ取りかかってみるとほんとうに面白く、最近のぼくにしては珍しくすんなり読みおえてしまった。超オススメ本である。 注文し…

Abraham Verghese の “Cutting for Stone”(1)

ニューヨーク・タイムズ紙の Trade Paperback 部門ベストセラー第8位、Abraham Verghese の "Cutting for Stone" を夕べ読みおえた。ほんとうは一気にレビューを書くつもりだったのだが、おとといの深酒がたたって昨日は朝寝坊。おかげで読了も予定より遅れ…

“Cutting for Stone”雑感(5)

快調また快調、これはほんとうに面白い! わずかながら今年の上半期に読んだ本の中では、間違いなくベストワン候補に入るだろう。今週は水曜日に家でかなり飲み、今日も職場の飲み会にちょっと顔を出してから帰宅したのだが、それでも最近のぼくにしてはかな…