ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

Stephen Kelman の "Pigeon English" (2)

これは結果的に、先週読みおえた Carol Birch の "Jamrach's Menagerie" と同じく、子供が大人へと成長する際の通過儀礼がテーマとわかり、どうしても両書を比較せざるをえない。Birch のほうは19世紀の海洋冒険を描いた歴史小説でもあり、回想形式だが、本…

Stephen Kelman の "Pigeon English" (1)

今年のブッカー賞候補作、Stephen Kelman の "Pigeon English" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Pigeon English作者: Stephen Kelman出版社/メーカー: Bloomsbury UK発売日: 2011/03/01メディア: ペーパーバック購入: 2人 クリ…

“Pigeon English” 雑感

今日は「コクリコ坂から」を見に行った。「わりとよかった」と娘が話していたからだが、ぼくの感想も似たようなものだ。気に入ったシーンのひとつは1963年、東京オリンピック前の横浜・桜木町駅周辺の風景で、映画館ブルク13を出て目に飛びこんできた現代の…

Carol Birch の “Jamrach's Menagerie”(2)

これ、終わってみれば、最初から当然、通過儀礼のテーマに気づくべきだったのに、勘の鈍いぼくは、「いちおうヒントらしきものはあるのだが、はて、ほんとうにそうなのかしらん」と思いつつ、べつのテーマがあることを相当に期待しながら読んでいた。おかげ…

Carol Birch の “Jamrach's Menagerie”(1)

今年のブッカー賞候補作、Carol Birch の "Jamrach's Menagerie" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Jamrach's Menagerie作者: Carol Birch出版社/メーカー: Canongate Books発売日: 2011/02/01メディア: ペーパーバック クリッ…

“Jamrach's Menagerie” 雑感(2)

昨日は「これ、フシギな小説です」と書いたが、今日は物語の方向も定まり、何だ、やっぱりそうだったのか、といったところ。目鼻がついてみるとフシギでも何でもなく、ごくフツーの海洋冒険小説です。あ、どんでん返しがなければ。 ぼくは『宝島』タイプの冒…

“Jamrach's Menagerie” 雑感(1)

今年の「ブッカー賞読書」第4弾。Carol Birch の "Jamrach's Menagerie" に取りかかった。あちらの評判はかなりいいようだ。William Hill のオッズは第3位、Ladbrokes では第6位。アマゾンUKでも星4つ。レビュー数は何と54もあり、A.D. Miller の "Snowd…

Sebastian Barry の “On Canaan's Side” (2)

雑感の続きを書こう。これ、ロングリストが発表されたとき、「かなり面白い物語ではないかと思われる」と直感したとおりだったが、じつはもうひとつ直感したことがある。何となく頭にのこっていた旧作 "The Secret Scripture" の印象からして、面白いことは…

Sebastian Barry の “On Canaan's Side” (1)

今年のブッカー賞候補作、Sebastian Barry の "On Canaan's Side" を読了。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。On Canaan's Side作者: Sebastian Barry出版社/メーカー: Faber & Faber発売日: 2011/08/01メディア: ハードカバー クリック: 9回こ…

“On Canaan's Side” 雑感(2)

明日には何とかレビューを書けそうなところまで読みすすんだ。「序盤はかなり地味な展開だ」というのが第一印象だったが、昨日の続きを読みはじめた直後、予想外の事件が発生。そこからにわかに物語のテンポが速くなり、思わず引きこまれてしまった。これ、…

“On Canaan's Side” 雑感(1)

今年のブッカー賞候補作、Sebastian Barry の "On Canaan's Side" に取りかかった。Barry といえば、08年のコスタ賞を取った "The Secret Scripture" が有名で、ぼくもレビューらしきものを書いたことがある。Barry の作品がブッカー賞にノミネートされたの…

Julian Barnes の “The Sense of an Ending” (3)

本書を読みはじめてからしばらくして、やられたね、と思った。小説オタクなら誰でも一度くらい、自分で小説を書いてみたくなるものだが、これ、ぼくが最近、いちばん気になる問題をみごとにフィクション化していて、ああ、こんな小説が書けたらなあ、でも無…

Julian Barnes の “The Sense of an Ending” (2)

ふだんはペイパーバック・リーダーのぼくだが、ハードカバーの本書は長編というより中編に近く(07年の候補作、Ian McEwan の "On Cecil Beach" とほぼ同じくらい)、これなら繁忙期のカタツムリ君でも速く読めるだろう。 あちらの評判はなかなかいいようだ…

Julian Barnes の “The Sense of an Ending” (1)

Alan Hollinghurst の "The Stranger's Child" に続いて、同じく今年のブッカー賞有力候補作、Julian Barnes の "The Sense of an Ending" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。The Sense of an Ending作者:Barnes, JulianJonathan CapeAmazon[☆☆…

Alan Hollinghurst の “The Stranger's Child”(3)

雑感(4)の訂正をしておこう。本書の第4部を読みはじめたとき、先のほうをパラパラめくって、これでもう最後だなと思ったのだが、短いながら、さらに第5部があったのにはビックリした。そこつ者のぼくらしいミスだ。 各部とも、「それぞれ山となる事件は…

Alan Hollinghurst の “The Stranger's Child”(2)

今年の夏は、今の職場にいるかぎり4、5年に1度やって来る繁忙期で、本来ならお盆でノンビリできるはずなのに、この土日も「自宅残業」。それでも昨日は、ここで本書を片づけなければついに挫折してしまう、と覚悟を決め、朝から取り組んだ結果、何とか読…

Alan Hollinghurst の “The Stranger's Child”(1)

予定より、というか予定どおり大幅に遅れたが、今年のブッカー賞有力候補作、 Alan Hollinghurst の "The Stranger's Child" をようやく読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。The Stranger's Child作者: Alan Hollinghurst出版社/メー…

“The Stranger's Child” 雑感 (4)

先週ほどではないにしても相変わらず多忙。おかげで、これまた相変わらずカタツムリ君だが、ようやく第3部を読みおえた。今見ると、残りはあと第4部だけ。それなのに、ここにいたるもまだまだ「長大なイントロ」といった感じだ。はて、どこまで続くぬかる…

“The Stranger's Child” 雑感 (3)

ずいぶんブログをサボってしまった。先週はここ数年でいちばん忙しい1週間で、帰宅後、夜中の2時ごろまで仕事をしてから朝は普通に出勤。土日は久しぶりに休めたものの、終日うたた寝ばかり。とても活字を追いかける気がしなかった。 というわけで、本書を…

“The Stranger's Child” 雑感 (2)

このところ、休日はあってないようなもので、連日、仕事に追われている。おかげで案の定、本書はカタツムリ君のペースでしか進んでいない。英語はけっこう易しいほうだと思うし、内容的にもまずまず面白い読み物なので、本来なら一気に片づけたいところだが…