ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

Clark Blaise の “The Meagre Tarmac” (2)

雑感にも書いたとおり、「このところオカタイ長編小説が続いたので、積ん読の山の中から組しやすそうなものを」という不純な動機で読みはじめた本書だが、なんのなんの、これは内容的にかなり深く、歯ごたえのある短編集だった。たまたま先週、「本は読みな…

Clark Blaise の “The Meagre Tarmac” (1)

昨年のギラー賞1次候補作、Clark Blaise の "The Meagre Tarmac" をやっと読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。The Meagre Tarmac作者: Clark Blaise出版社/メーカー: Biblioasis発売日: 2011/06/07メディア: ペーパーバック購入: 1…

“The Meagre Tarmac” 雑感

今週は Clark Blaise の短編集 "The Meagre Tarmac" をボチボチ読んでいた。このところオカタイ長編小説が続いたので、積ん読の山の中から組しやすそうなものを選んだつもりだったが、電車やバスの中で1日1話が関の山。今日も仕事から帰ったあと読もうと思…

Teju Cole の “Open City” (4)

「本書はたしかに深い。だが…もっと深く! とつい思ってしまう」のが難点?のひとつ。これは多分にぼくの好みの問題だけれど、さらにもうひとつ好みを言うと、小説の場合、ただ深ければいいものではない、ともぼくは思っている。深いだけなら哲学書でも十分…

Teju Cole の “Open City” (3)

さて、本書はめでたく今年の全米批評家(書評家)協会賞の finalists にも選ばれたことだし、ますます☆☆☆☆でいいのではないか、という気がしてきた。同賞の選考委員もきっと、現代の作品では珍しいほどの「文学的な深み」、つまり、主人公が「自己の内面を客…

2011年全米批評家協会賞最終候補作発表

うかつでした。ニューヨーク時間で去る21日、全米批評家協会賞の最終候補作が発表されていたんですな。読んだばかりで、もっか感想を書きつづけている Teju Cole の "Open City" が選ばれたのはタイムリーとして、廉価版待ちだった "The Marriage Plot" もノ…

Teju Cole の “Open City” (2)

正直言って、いまだに採点を迷っている。昨日はとりあえず、☆☆☆★★★としたけれど、☆☆☆☆でもいいのではないか。 ぼくは本書の主人公と同様、本も映画も大好きだが、両者の共通点は、どちらもストーリーがあること。これがひとつの柱であり、映画の場合はさらに…

Teju Cole の “Open City” (1)

Teju Cole の "Open City" をやっと読みおえた。昨年、タイム誌やエコノミスト誌、ニューヨーカー誌などが選んだ優秀作品のひとつである。いつものようにまずレビューを書いておこう。Open City作者: Teju Cole出版社/メーカー: Faber & Faber発売日: 2011/0…

“Open City” 雑感 (3)

今日は出勤日で先ほど帰宅したばかり。まだいくらも進んでいない。ところが、眠い目をこすりつつ読んでいたら、なんと、ビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』に話が及んだのにはビックリした。ミツバチを飼っている父親と幼い娘アナが登場する場面…

“Open City” 雑感 (2)

これは去年の7月だったか、米アマゾンの上半期ベスト10小説に選ばれているのを見かけ、すでにペイパーバック版も出ているということで入手した。以来、積ん読のままでいたところ、11月に発表された年間ベストでは落選。ありゃ、このまま後回しかと思ってい…

“Open City” 雑感 (1)

おとといの自問のうち、2番めの「一般にあまり知られていない(と思われる)悲惨な歴史が描かれている点をどう評価するか。そのことだけで、小説として得点材料となりうるのか」という問いにたいしては、昨日なんとか自分なりに答えられたと思うが、最初の…

Ruta Sepetys の “Between Shades of Gray” (5)

ずいぶん引っぱりますが、昨日の続きを。要するに、ハンガリーにしてもリトアニアにしても、その国の歴史は、不謹慎な言い方になるかもしれないが、よろず不勉強のぼくにはどちらも小説の材料としては「新ネタ」にすぎない。それゆえ、ただ「新ネタ」である…

Ruta Sepetys の “Between Shades of Gray” (4)

えらくもったいぶってしまったが、ここでようやく「ほかにもっと書きたいこと」を明らかにしておこう。それは次の2点に絞られる。 1.この平和な国で、本書のように外国の悲惨な歴史が描かれた小説を読む意味は何なのか。また、それを点数で評価する意味と…

Ruta Sepetys の “Between Shades of Gray” (3)

「ほかにもっと書きたいこと」の前に、日本語で書かれたリトアニアをはじめバルト3国にかんする本を3冊、知人から紹介されたので、それをまず受け売りで列挙しておこう。物語 バルト三国の歴史―エストニア・ラトヴィア・リトアニア (中公新書)作者: 志摩園…

Ruta Sepetys の “Between Shades of Gray” (2)

ようやく体調の回復をかなり実感できるようになった。やっぱり首のストレッチが効いたようだ。しかしまだ完全ではないので無理は禁物。今日も休養に徹し、仕事はせず本も読まずに過ごした。 さて本書の続きだが、のこりの数十ページを昨日読んでいたら最後、…

Ruta Sepetys の “Between Shades of Gray” (1)

今日は土曜出勤だったが、帰りのバスの中で何とか読了。ノンフィクションなどもふくめ、アマゾンUKが選んだ10冊の Best Books of 2011 のひとつである。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Between Shades Of Gray作者: Ruta Sepetys出版社/メー…

“Between Shades of Gray” 雑感

ようやくちょっぴり体調がよくなってきた。べつに薬は服んでいないのだが、ネットに載っていた首のストレッチを毎日、小さな仕事の切りがつくたびに実行している効果が出てきたのかもしれない。年明けからの記事を読み、心配してメールをくれた友人もいる。…

Elizabeth Haynes の “Into the Darkest Corner”(2)

相変わらず気分はすぐれないが、ぼくの勘違いで本書が昔の恋人のミステリだったせいか、意外に早く読みおえることができた。内容も確かめず、魅力的なカバーとタイトルだけで入手した今回の「見てくれ買い」、まずまず当たりといったところでしょうか。 ミス…

Elizabeth Haynes の “Into the Darkest Corner” (1)

アマゾンUKが選んだ(ノンフィクションもふくむ)昨年の最優秀作品のひとつ、Elizabeth Haynes の "Into the Darkest Corner" を読了。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Into the Darkest Corner作者: Elizabeth Haynes出版社/メーカー: Myria…

“Into the Darkest Corner” 雑感 (2)

気分がすぐれないまま読んでいるのでピッチは上がらないが、だいぶ本書の目鼻がついてきた。まず昨日の訂正。2004年の事件は「概要すら不明」と書いたが、どうやら Lee が恋人の Catherine に暴行を加えたものらしい。ただ、詳細は不明なので、ほかにもっと…

“Into the Darkest Corner” 雑感 (1)

昨日まで "The Night Circus" についてずいぶんミもフタもない駄文を書き連ねてしまったが、これが「蠱惑的なタイトルから予感されるとおり、いや、それ以上に読者の心をわしづかみにする」すばらしい出来ばえであることは間違いない。余計な屁理屈をこねず…

Erin Morgenstern の “The Night Circus” (5)

本書の舞台となった世にも不思議なサーカスについて、登場人物のあるマジシャンがこう述べている。'This is not magic. This is the way the world is, only very few people take the time to stop and note it. Look around you. ...Not a one of them eve…

Erin Morgenstern の “The Night Circus” (4)

つまり、正気であって初めて狂気を理解できるように、現実があるからこそ非現実を、現実と非現実の混淆を楽しむことができる。SFやファンタジー、マジック・リアリズムの小説など、非現実の世界を扱った文学作品には間違いなく「一種異様な詩美がある」けれ…

Erin Morgenstern の “The Night Circus” (3)

頭痛はだいぶ治まってきたが、まだ時折、首筋にぴくっと電気のように痛みが走り、気休めに湿布を貼っている。ネットで調べるとストレッチがいいそうだ。これから毎日実践しようと思っているが、意志の弱いぼくには、この「毎日」というのがツライ。 さて、"T…

Erin Morgenstern の “The Night Circus” (2)

いやはや、さんざんな年末年始だった! 暮れの29日夜、本書を読んでいる最中に突然、後頭部に痛みが走り、以後、昨日まで七転八倒…とは言わないまでも、三転四倒くらいはしたと思う。初詣はせず、楽しみにしていたシャンペン、モエもあきらめ、ひさしぶりに…