ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

Cesare Pavese の “The Political Prisoner” と “The Beautiful Summer” (1)

杞憂だと思いたいが、9月13日の日記に「〈ブログ炎上もの〉」と書いた心配が現実のものになりつつあるようだ。同日もふくめ、何日か連続して論じた作家についてネットで検索したところ、なんと一連の記事にたどり着けなくなっているのだ。不思議に思い、作…

“The Beautiful Summer” 雑感

Cesare Pavese の "The Beautiful Summer" を読んでいる。というか、もう読みおえた。だからさっそくレビューを書いてもいいのだが、長らく積ん読中だった Peter Owen 社版の英訳本のタイトルは "The Political Prisoner" といい、同名の中編と "The Beautif…

Aharon Appelfeld の “Blooms of Darkness” (3)

昨日、アンテナを設置しました。おもしろそうな本を探すとき、ぼくがたまに拾い読みしている海外のブログです。(Michiko Kakutani はべつだけど)。ちなみに、Alison Moore の "The Lighthouse" について、The Mookse and the Gripes さんが最新の記事で、'…

“Umbrella” 雑感と Aharon Appelfeld の “Blooms of Darkness” (2)

今日はまず、1冊だけ読みのこしている今年のブッカー賞最終候補作、Will Self の "Umbrella" について思ったことから書いておこう。冒頭を少しだけ拾い読みしてみたが、パラパラやったときの印象どおり、かなりの難物である。意識の流れの技法が多用されて…

Aharon Appelfeld の “Blooms of Darkness” (1)

今年のインディペンデント紙外国小説最優秀作品賞(Independent Foreign Fiction Prize)の受賞作、Aharon Appelfeld の "Blooms of Darkness"(2006)を読了。作者はイスラエルの作家で、ヘブライ語からの英訳である。さっそくレビューを書いておこう。Bloo…

W. G. Sebald の “Vertigo” (2)

はてさてドジなことに、第1章の主人公 Marie Henri Beyle がスタンダールの本名だったとは、裏表紙の紹介記事を読むまで思いもつかなかった。途中、"De L'Amour" が出てきたところでピンとくるべきでしたね。 それよりヒドイのは、昨日のレビューを書いてい…

W. G. Sebald の “Vertigo” (1)

昨日の夕方、W. G. Sebald の "Vertigo" を読了。晩酌にワインをボトル半分飲んだあと、酔ったいきおいでレビューを書きはじめたが、夜の11時ごろ、わけがわからなくなり中断した。一夜明けてなんとか書きおえた次第である。Vertigo作者:Sebald, W.G.Vintage…

“Vertigo” 雑感

注文していた Will Self の "Umbrella" が今日届いたが、難物の予感。昨日からボチボチ取りかかった W. G. Sebald の "Vertigo" を引きつづき読むことにした。8月からスタートした私的な〈世界文学の夏〉シリーズのドイツ編である。9月なのに夏というのも…

Fyodor Dostevsky の “The Eternal Husband and Other Stories” (2)

いやはや、疲れました! 連休(土曜日は出勤だったので2連休)がなかったら、とても読みきれなかったのではないか。これほど頭を使ったのは、3月に読んだトルストイの英訳短編集以来だ。こんな感想を述べても無意味だが、トルストイとドストエフスキー、や…

Dostoevsky の “The Eternal Husband and Other Stories” (1)

Dostoevsky の英訳短編集 "The Eternal Husband and Other Stories" をやっと読みおえた。訳者はご存じ Richard Pevear & Larrisa Volokhonsky 夫妻である。さっそくレビューを書いておこう。(点数はあくまでも、お遊びです)。The Eternal Husband and Oth…

“The Eternal Husband and Other Stories” 雑感 (3)

今年のブッカー賞最終候補作で1冊だけ読み残している Will Self の "Umbrella" がまだ手元に届かない。そこで、今月初めに中断してしまった Dostoevsky の英訳短編集、"The Eternal Husband and Other Stories" に再びとりかかった。こんどは第2話の表題作…

Tan Twan Eng の “The Garden of Evening Mists” (4)

要するに本書には、人間を簡単に善玉と悪玉に分けてしまう人間観が認められる。じつはそこに全体主義の恐怖が、虐殺の論理がひそんでいるのだが、話を広げすぎないように元に戻ろう。 この本の最大の読みどころは、雑感にも書いたとおり、「日本人を憎んでい…

Tan Twan Eng の “The Garden of Evening Mists” (3)

ぼくとしてはできるだけ本書を「純粋にフィクションとして見る」努力をしたつもりだが、ひるがえって、小説を「純粋にフィクションとして見る」とは一体どういうことなのだろう。構成や表現の巧みさ、テーマや各場面が与える感動、人物の生き方のみごとさな…

Tan Twan Eng の “The Garden of Evening Mists” (2)

ああ困った! これ、〈ブログ炎上もの〉の作品だからだ。このブログはたまたま、世捨て人の自己確認が主な目的なので交信不可にしているが、さもなければ、本書に出てくる「いわゆる従軍慰安婦や南京大虐殺、日本の戦争責任など、日本人にとって看過すること…

Tan Twan Eng の “The Garden of Evening Mists” (1)

今年のブッカー賞最終候補作、Tan Twan Eng の "The Garden of Evening Mists" を読了。さっそくレビューを書いておこう。なお、このレビューは昨日のショートリスト http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20120911 と、7月26日のロングリスト http://d.hatena…

2012年ブッカー賞ショートリスト発表 (Man Booker Prize 2012 shortlist)

夜の10時過ぎにふと、ブッカー賞の公式サイトをのぞいてみたら、意外に早くショートリストが発表されていた。このうち、"The Garden of Evening Mists" はちょうど今読んでいるところ。がんばれば明日にはレビューが書けるだろう。 今年はさいわい、手つかず…

“The Garden of Evening Mists” 雑感

いよいよブッカー賞ショートリストの発表が近づいてきた。日本時間だと12日の早朝だろうか。それまでには読了できそうにないが、とりあえず Tan Twan Eng の "The Garden of Evening Mists" を読みはじめた。William Hill がなぜか文字化けしてしまうので、N…

Ned Beauman の “The Teleportation Accident” (2)

「まるでおもちゃ箱をひっくり返したよう」な小説という形容は、われながら、けっこう本書の核心をついているような気がする。よくまあ、ヘンテコかつ愉快なエピソードを次から次に思いつくものだ。この創造力、想像力はただごとではない。そういう意味では…

Ned Beauman の “The Teleportation Accident” (1)

今年のブッカー賞候補作、Ned Beauman の "The Teleportation Accident" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。なお、今回のぶんもふくめて、今まで読んだ候補作のレビューを7月26日の日記にまとめておきました。http://d.hatena.ne.jp/sakihidem…

“The Teleportation Accident” 雑感 (2)

中盤を過ぎたあたりで、ようやくSFらしくなってきた! いちばん出番が多いという意味で主人公の Egon Loever が愛する女 Adele Hitler (あのヒトラーとは無関係) を追いかけ、ベルリンからパリへ、さらにロサンジェルスと移動。そのロスの大学で、Dr. Bale…

“The Teleportation Accident” 雑感 (1)

せっかくドストエフスキーの英訳短編集を読みはじめたのだが、ブッカー賞のショートリストの発表が迫ってきたのでひと休み。急遽、Ned Beauman の "The Teleportation Accident" に取りかかった。ペイパーバック版がもう出ているから、というだけの理由で以…

“The Eternal Husband and Other Stories” 雑感 (2)

きょう愛媛の田舎から横浜に帰ってきた。昨日は友人の車で高知の中土佐町まで出かけ、久礼の〈黒潮本陣〉で鰹たたき定食を満喫。とろけるような味だったが、友人によると、戻り鰹の季節がいちばんうまいと言う。帰りは四万十川沿いの道を走り、有名な岩間の…

“The Eternal Husband and Other Stories” 雑感 (1)

帰省3日目。いつものネットカフェでこれを書いている。チャリだと実家から10分だが、今日はもうすぐ、四万十市からやって来る友人と落ちあうことにしているので徒歩。25分もかかり、えらく疲れてしまった。しかし夕食後の運動にはちょうどよかったかな。途…