ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

Chimamanda Ngozi Adichie の “Americanah”(4)

本書の落ち穂拾いはもうおしまいと思っていたが、今日も仕事でヘトヘト。読みだした本もろくに進んでいないので、昨日に引きつづき、"Americanah" の気に入ったくだりを引用してお茶を濁しておこう。わかりにくい箇所もあるかと思うが、説明はいっさい省略し…

Chimamanda Ngozi Adichie の “Americanah” (3)

昨日も今日も帰宅は夕方。もっか超多忙中につき、なかなか本が読めない。このブログも書くゆとりがなく、ゆうべもパソコンに向かったまま眠りこけてしまった。 そこできょうは、本書のヒロイン Ifemelu が書いたブログの記事を引用してお茶を濁しておこう。…

Chimamanda Ngozi Adichie の “Americanah” (2)

仕事の合間に本書をダラダラ読んでいるうちに、ブッカー賞のロングリストが発表されてしまった。きょうはまず、毎年おなじみ William Hill の odds を紹介しておこう。 6/1 Eleanor Catton "The Luminaries" 7/1 Jim Crace "Harvest", 7/1 Colm Tóibín "The …

Chimamanda Ngozi Adichie の “Americanah” (1)

諸般の事情で予定よりずいぶん遅れてしまったが、Chimamanda Ngozi Adichie の新作 "Americanah" をなんとか読了。さっそくレビューを書いておこう。Americanah: A novel (ALA Notable Books for Adults)作者:Adichie, Chimamanda NgoziKnopfAmazon[☆☆☆☆] な…

2013年ブッカー賞ロングリスト発表 (2013 Man Booker Prize Longlist)

どうやら今年のブッカー賞のロングリストが発表されたようですな。見ると、ぼくの「直前予想」で当たったのは、以下にレビューを再録した3冊のみ。まだ読んでいる途中なのに、「今年の大本命かもしれませんよ!」とアドバルーンを上げた Chimamanda Ngozi Ad…

2013年ブッカー賞ぼくのロングリスト予想

いよいよロンドン時間で23日、ブッカー賞のロングリストが発表される。あちらのファンはさぞ、どんな作品が選ばれそうかという話題で大いに盛り上がっていることだろう。 下馬評の一部は、このブログで紹介している Man Booker Prize Eligible 2013 や The M…

“Americanah” 雑感

Chimamanda Ngozi Adichie の "Americanah" をボチボチ読んでいる。Adichie が新作を出したことは前から知っていた。ニューヨーク・タイムズ紙の書評家 Janet Maslin のレビューを目にしたことがあるからだ。Michiko Kakutani の場合と同じく、内容までは読…

Donal Ryan の “The Spinning Heart” (2)

きょうはまず、本書の前に読んだ J. M. Coetzee の "The Childhood of Jesus" の補足から。 その後、カトリック信者でキリスト教に造詣の深い知人に問い合わせたところ、同書のタイトルからして、信者なら誰でもみんな、ユダヤ教の律法が支配していた旧約の…

Donal Ryan の “The Spinning Heart” (1)

アイルランドの新人作家、Donal Ryan の "The Spinning Heart" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Spinning Heart作者:Ryan, DonalDoubleday IrelandAmazon[☆☆☆★] アイルランドの小さな村を舞台とする、実質的にはショートショート集といってもい…

“The Spinning Heart” 雑感

アイルランドの新人作家、Donal Ryan の "The Spinning Heart" をボチボチ読んでいる。例の(どれだけ信頼できるかは疑問だが)Man Booker Prize Eligible 2013のリストで現在、第3位にランクインしている作品だ。一時は6位まで下がっていたが、いま検索する…

J. M. Coetzee の “The Childhood of Jesus” (3)

この連休は、忙中閑あり、小人閑居して不善を為す。要するにダラダラ過ごしてしまった。読みはじめた本はあるのだが、まだ途中経過を報告するほどでもないので、あと1回だけ "The Childhood of Jesus" の落ち穂拾いをしておこう。 David は常識にとらわれな…

J. M. Coetzee の “The Childhood of Jesus” (2)

話としてはおもしろかったのにな、というひとことに尽きるかもしれない。 主人公の中年男 Simon は、自分の子ではない少年 David の母親を捜しに、未来社会テーマのSFを思わせる Novilla の街にやってくる。その動機とはべつに、Simon は出会う女性に関心…

J. M. Coetzee の “The Childhood of Jesus” (1)

ノーベル賞作家 J. M. Coetzee の最新作、"The Childhood of Jesus" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Childhood of Jesus作者:Coetzee, J. M.Harvill SeckerAmazon[☆☆☆★★] 哲学とは「ひとを揺さぶり、ひとの人生を変えるようなもの」であるのが…

“The Childhood of Jesus” 雑感

ノーベル賞作家 J. M. Coetzee の最新作、"The Childhood of Jesus" をボチボチ読んでいる。例の Man Booker Prize Eligible 2013 のリストで発見し(第10位)、その後、The Mookse and the Gripes Forum でも好評のようなので気になった。 Coetzee の作品を…

Jim Crace の “Harvest” (2)

「最後にどんでん返しでもあるのかな」と期待しながら読んでいると、「どんでん返し」というほどではないが終盤、大きな山場。それまで「何を訴えようとしているのかよくわからな」かった本書の意図も、そこでようやく腑に落ちた……ような気がした。 「深読み…

Jim Crace の “Harvest” (1)

Jim Crace の "Harvest" を読了。今年2月にアマゾンUKが選んだ月間優秀作品のひとつで、最近はブッカー賞ロングリストへのノミネートも取り沙汰されている。さっそくレビューを書いておこう。 追記:その後、本書はブッカー賞ショートリストに入選。また201…

“Harvest” 雑感

Jim Crace の "Harvest" をボチボチ読んでいる。Crace は1997年に "Quarantine" がブッカー賞最終候補作に選ばれるなど、かなり有名な作家らしいが、ぼくは例によって不勉強で初耳。今回、この "Harvest" があちらのファンのあいだで今年の同賞〈ロングリス…

Mohsin Hamid の “How To Get Filthy Rich in Rising Asia” (3)

きょうは土曜日だが出勤。先ほど帰宅したばかりで疲労困憊。晩酌の前に、ちょっとだけ本書の落ち穂拾いをしておこう。ここで提示される蓄財のノウハウは、つぎの12ステップから成っている。 1. Move to the city 2. Get an education 3. Don't fall in love …

Mohsin Hamid の “How To Get Filthy Rich in Rising Asia” (2)

序盤を読んだだけで、本書は「最低でもブッカー賞のロングリスト、さらにはショートリストさえうかがえる出来ではないだろうか」と「ずいぶん大風呂敷を広げてしまったが」、その後、期待したほど中盤で盛り上がらず、終盤なんとか持ち直したものの、最終的…

Mohsin Hamid の “How To Get Filthy Rich in Rising Asia” (1)

Mohsin Hamid の新作、"How To Get Filthy Rich in Rising Asia" を読了。さっそくレビューを書いておこう。EXP - How to Get Filthy Rich in Rising Asia: A Novel作者:Hamid, MohsinRiverhead BooksAmazon[☆☆☆★★] まず着想がいい。タイトルどおり、あるア…

“How To Get Filthy Rich in Rising Asia” 雑感

Mohsin Hamid の新作、"How To Get Filthy Rich in Rising Asia" をボチボチ読んでいる。先日紹介したサイトに載っている Man Booker Prize Eligible 2013 のリストによると、堂々第2位の作品である。第1位は Kate Atkinson の "Life after Life" [☆☆☆★] だ…

William Trevor の “The Story of Lucy Gault” (2)

これは旧作探訪シリーズの一環。なにしろ2006年ごろ以前の作品は、気が遠くなるほどたくさん読み残している。機会を見つけて少しずつ catch up するしかない。 さて、William Trevor といえば、ご存じ短編の名手である。ぼくもあの "The Collected Stories" …