ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

Jhumpa Lahiri の “The Lowland” (2)

ロングリストに Jhumpa Lahiri の名前を見つけたとき、えっと誰もが驚いたのではないだろうか。ご存じ "Interpreter of Maladies" (1999) でデビューしたときから、なんとなくアメリカの作家というイメージがあるからだ。 ……などと長年の文学ファンのような…

Jhumpa Lahiri の “The Lowland” (1)

今年のブッカー賞最終候補作、Jhumpa Lahiri の "The Lowland" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Lowland作者:Lahiri, JhumpaBloomsbury Publishing PLCAmazon[☆☆☆★★] 雨が降れば水につかるカルカッタ市内の低地。少年時代にそこで遊んだ兄弟と…

Ruth Ozeki の “A Tale for the Time Being” (5)

土曜日はいつも出勤日なのだが、きょうは日程の変更で休み。久しぶりにゆっくり時間が取れ、Jhumpa Lahiri の "The Lowland" をあと少し、というところまで読み進んだ。 このまま一気に片づけてもいいのだが、土曜日は晩酌デーでもあるのでレビューは書けそ…

Ruth Ozeki の “A Tale for the Time Being” (4)

Nao の話はどうした、あっちが本筋だろ! と座布団が飛んできそうだが、きょうも Haruki #1 について考えてみたい。 彼は特攻を志願した理由のひとつをこう述べている。'By volunteering to sortie, I have now regained a modicum agency over the time rem…

Ruth Ozeki の “A Tale for the Time Being” (3)

さて、本書が相当に読みごたえのある佳作であることを十分に認めたうえで、あえて重箱の隅をつつき、いささか気になる点にふれておこう。 主人公 Nao の曾祖母 Jiko には、太平洋戦争末期に特攻隊員として戦死した息子 Haruki がいた。その名をもらったのが …

Ruth Ozeki の “A Tale for the Time Being” (2)

きょうは簡単な補足だけしておこう。タイトルについてだが、Nao の曾祖母 Jiko がメールでこんな俳句を Nao に送ってくる。 「あるときや ことのはもちり おちばかな」 (p.23) この英訳も載っていて、'For the time being,/ Words scatter... / Are they fal…

Ruth Ozeki の “A Tale for the Time Being” (1)

最近は自分でも感心するくらい仕事に没頭。読書もブログもさっぱりだったが、この連休中(といっても、ぼくの場合は2連休)は久しぶりにまとまった時間が取れ、序盤だけ読んだまま中断していた今年のブッカー賞最終候補作、Ruth Ozeki の "A Tale for the T…

“A Tale for the Time Being” 雑感

ゆうべ、意外にも早くブッカー賞のショートリスト発表のニュースをキャッチするまでは、Richard House の "The Kill" を読んでいた。同賞の第一次候補作である。 今週から取りかかったのだが、イマイチ乗れない。ミステリアスな筋立てで、それなりにおもしろ…

2013年ブッカー賞ショートリスト発表 (2013 Man Booker Prize Shortlist)

ロンドン時間で10日、今年のブッカー賞ショートリストが発表された。今年の夏は仕事その他、諸般の事情でろくに本が読めず、下馬評もたしかめなかったので、順当な結果かどうかはわからない。たまたま読んだロングリスト7作の中では、残念ながら落選してし…

Charlotte Mendelson の “Almost English” (3)

母親のローラは義理の母たちと同居し、娘のマリーナはドーセットにある全寮制のパブリック・スクールに転校。それなのに二人の心理状態は「パラレルで、一方がパニックにおちいったときは相手もまたしかり、という展開」である。 この構成や、ほかにも作者の…

Charlotte Mendelson の “Almost English” (2)

たいへん遅ればせながら、きょう『風立ちぬ』を観に行った。これも本書とおなじく大幅に予定がずれこんでしまった。 堀辰雄と堀越二郎をミックスさせた話と聞いたときから興味があり、一ヵ月前に友人に感想を聞いたところ、「よかったよ」という。その後、宮…

Charlotte Mendelson の “Almost English” (1)

すっかり予定が狂ってしまったが、おととい今年のブッカー賞候補作、Charlotte Mendelson の "Almost English" を読了。きょうまでレビューを書く時間が取れなかった。メモを見て思い出しながら書いておこう。Almost English作者:Mendelson, CharlotteMantle…