ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2017-01-01から1年間の記事一覧

2017年国際ブッカー賞受賞作・David Grossman の “A Horse Walks Into a Bar”(1)

順番から言うと、きょうは Elizabeth Strout の "Anything Is Possible" の話を続ける日だが、その前に、ゆうべ読みおえた David Grossman の "A Horse Walks Into a Bar"(2016)のレビューを書いておかないといけない。 Grossman はイスラエルの作家で、本…

Arundhati Roy の “The Ministry of Utmost Happiness”(2)

David Grossman の "A Horse Walks Into a Bar" を読了。ご存じ今年の Man Booker International Prize の受賞作である。本来ならすぐにレビューを書くところだが、いまは風呂上がり。明日の仕事に差し支えるといけない。そこで表題作の話に戻ろう。 Arundha…

Elizabeth Strout の “Anything Is Possible”(1)

きょうは Arundhati Roy の "The Ministry of Utmost Happiness" について駄文の続きを、と思っていたが、意外に早く、Elizabeth Strout の最新作、"Anything Is Possible" を読了。印象の薄れないうちにレビューを書いておこう。Anything is Possible作者:S…

Arundhati Roy の “The Ministry of Utmost Happiness”(1)

ゆうべも書いたとおり、Arundhati Roy の新作 "The Ministry of Utmost Happiness"(2017)を読了。フィクションとしては20年ぶりの2作目である。ひと晩寝かせたところで、さて、どんなレビューになりますやら。The Ministry of Utmost Happiness: A novel…

"The Ministry of Utmost Happiness" 雑感(2)

夕食後、やっと本書を読みおえた。いつもなら、さっそくレビューを書くところだが、いまは風呂上りでもう時間がない。きょうはメモの確認だけ。 当初は Anjum という hijra(両性具有者)が主人公。彼女(彼)はインドの首都、デリー市内の墓場に住んでいる…

"The Ministry of Utmost Happiness" 雑感(1)

Arundhati Roy の "The Ministry of Utmost Happiness"(2017)を読んでいる。今月6日に出版されたばかりの新作だ。 Arundhati Roy といえば、ご存じ1997 年のブッカー賞受賞作、"The God of Small Things" で有名なインドの作家である。あれは本当にすばら…

Mohsin Hamid の “Exit West”(3)

本書はたしかに恋愛小説である。が、それより何より、街なかに突然出現したドアを通じて、アジアやアフリカなどから先進国へ瞬時に移動できる、という近未来のSF的な設定で移民問題を大々的に扱っている点がミソだろう。 ぼくは最初、移民と先住民の激しい対…

Mohsin Hamid の “Exit West”(2)

Mohsin Hamid の作品を読むのは本書で3冊目。初めて読んだのは、ご存じ2007年のブッカー賞最終候補作 "The Reluctant Fundamentalist"(☆☆☆★★)。当時のレビューを読みかえすと、わりとおもしろい、という程度だったようだ。 次に、ちょうど4年前の今ごろ…

Mohsin Hamid の “Exit West”(1)

ゆうべ、Moshin Hamid の最新作、"Exit West"(2017)を読了。眠かったのでレビューはきょうに回すことにした。はて、どんな駄文になりますやら。Exit West: SHORTLISTED for the Man Booker Prize 2017作者:Hamid, MohsinHamish HamiltonAmazon[☆☆☆★] いま…

Hassan Blasim の “The Iraqi Christ”(2)

つい先ほど検索して驚いた。本書が2014年に受賞した Independent Foreign Fiction Prize は、なんと2015年で終了。例の Man Booker International Prize に一本化されたという。寂しいニュースだ。 ぼくがこの賞の存在を知ったのは、ノルウェーの作家、Per P…

Hassan Blasim の “The Iraqi Christ”(1)

2014年の Independent Foreign Fiction Prize 受賞作、Hassan Blasim の "The Iraqi Christ"(2013)を読了。Blasim はフィンランド在住のイラク人作家、詩人、映画製作者で、本書はアラビア語からの英訳短編集である。さっそくレビューを書いておこう。The …

Juan Gabriel Vasquez の “The Sound of Things Falling”(2)

やっと2回目を書く時間が取れた。しかし読みおわってから一週間。早くも記憶が薄れかかっている。ほんとに☆☆☆★★★でよかったのかな。 じつはレビューを書きながら、最後の★を消したり加えたり、ずいぶん迷ってしまった。たかが5点、されど5点。 結局、途中…

Sebastian Barry の “Days without End”(4)

もう一回だけ続きを書いておこう。主人公 Thomas の親友 John がこんな話をする。John Cole says in human matters there often three things rivalling. Truths fighting one with another. That's the world, he says.(p.239) three とは、最低でも、と…

Sebastian Barry の “Days without End”(3)

順番が狂ってしまった。"Days without End" の話にもどろう。 すっかり忘れていたが、08年度のコスタ賞大賞を受賞した Sebastian Barry の旧作 "The Secret Scripture" は、同年のブッカー賞最終候補作でもあった。怪しい記憶をたどると、たしか先にブッカー…

Juan Gabriel Vásquez の “The Sound of Things Falling”(1)

もう一回だけ Seabastian Barry の "Days without End" を取り上げようと思っていたが延期。意外に早く、Juan Gabriel Vásquez の "The Sound of Things Falling"(2011) を読みおえてしまった。そのレビューから先に書いておこう。2013年の国際IMPACダブリ…

Sebastian Barry の “Days without End”(2)

続きを書く時間がなかなかとれなかった。といっても、たいした補足ではない。 本書は去る1月に2016年度コスタ賞大賞を受賞。そのニュースを知ってひとまず入手したものの、すぐには食指が動かなかった。処女小説部門賞に輝いた "Golden Hill"(未読)のほう…

Sebastian Barry の “Days without End”(1)

Sebastian Barry の "Days without End"(2016)を読了。周知のとおり、今年の1月に発表された2016年度コスタ賞大賞受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。Days Without End作者:Barry, SebastianFaber & FaberAmazon[☆☆☆★★★] 殺すか殺されるか。…

Kurt Palka の“The Piano Maker”(2)

今週は超多忙。もう一回だけ本書について駄文を綴らねばと思いつつ、なかなか時間が取れなかった。 べつにたいした補足ではない。これは典型的な文芸エンタテインメントである。ヒロインの Helene は純真で、窮地におちいった彼女に救いの手を差し伸べる人び…

Kurt Palka の “The Piano Maker”(1)

ゆうべ本書についてふれたあと、なんとか頑張って読みおえた。Kurt Palka はカナダではわりと人気作家のようである。中身を忘れないうちにレビューを書いておこう。The Piano Maker作者:Palka, KurtMcClelland & StewartAmazon[☆☆☆★★] 1930年代、古き佳き時…

"The Piano Maker" 雑感

まずきのうの補足から。ぼくが大嫌いなタイプの小説の例として挙げた "The Piano Teacher" は、ノーベル賞作家 Elfriede Jelinek の作品(☆☆☆★★)ではなく、Janice .... という Chi .... 系作家のもの(☆☆★★★)。 なぜ伏せ字にしたかというと、こんなマイナ…

Melanie Dobson の “Chateau of Secrets”(4)

きのうは仕事帰りに量販店に立ち寄り、「ワイルド・スピードX2」ほか数枚をまとめ買い。さっそく晩酌をやりながら見たが、たまにはこういう〈スカッと系〉映画もいいですな。 小説もおなじで、いつもシンネリムッツリの純文学ばかりだと、もともとネクラのぼ…

Melanie Dobson の “Chateau of Secrets”(3)

文学は十人十色、いろんな見方や好みがあっていい。だから前回エラソーなことを書いたのも要するに、ぼくはこんなのが好き、とテキトーに言ったにすぎない。 「文学の場合、作家の『思想やもくろみ』が高いか低いか、深いか浅いかは、その作品を評価するうえ…

Melanie Dobson の “Chateau of Secrets”(2)

これはまさしく通勤快読本。ほんとにおもしろかった! 残念なのは、諸般の事情でコマギレにしか読めなかったこと。それでもクイクイ度(クイクイ読める度合い)は抜群だったのだから、できれば一気に読みたかった。 だから点数も、久しぶりに☆☆☆★★★(約75点…

Melanie Dobson の “Chateau of Secrets”(1)

きょうも昼過ぎまで〈自宅残業〉。しかし午後はがんばって、Melanie Dobson の "Chateau of Secrets"(2014)をようやく読了。さっそくレビューを書いておこう。Chateau of Secrets作者:Dobson, MelanieCenter PointAmazon[☆☆☆★★★] ああ、おもしろかった! …

"Chateau of Secrets" 雑感(7)

連休が明けたとたん繁忙期。とてもじゃないがブログを更新するヒマがなかった。「ブログはヒマな人がやるもの」といつか言われたのを思い出す。 それでも表題作は通勤快読。読んでいるうちに眠りこけることもなく、コマギレながら楽しく読んでいる。 その理…

"Chateau of Secrets" 雑感(6)

連休最終日。きょうも昼過ぎまで、中島みゆきのアルバムを流しながら〈自宅残業〉。 異変が起きたのはそのあとだ。なんとガラケーを洗濯機に水没させてしまったことが判明。やむなく最寄り駅近くの携帯ショップに持ち込んだところ、めでたくスマホ・デビュー…

"Chateau of Secrets" 雑感(5)

ぼくの連休4日目。代わりばえのしない毎日だ。昼過ぎまで、中島みゆきのアルバムを次々に流しながら〈自宅残業〉。「問題集」に収められている「病院童」はケッサクですな。 昼食後、シュタイアー盤「ディアベッリ変奏曲」を聴きながら表題作を読んだ。大き…

"Chateau of Secrets" 雑感(4)

ぼくにとっての連休2日目。とはいえ、きのうもきょうも昼過ぎまで〈自宅残業〉。 さすがにストレスがたまり、昼寝のあと、佐藤俊介盤「24のカプリース」を聴きながら表題作を読んだ。相変わらず、おもしろい! 前々回、本書がよく出来た文芸エンタメである…

ぼくの友だち

きょうは早退して通院。一週間前に転んで打撲した左肩を診てもらったところ、三角巾は外していいものの、完治するまでざっと一ヵ月とのこと。やんぬるかな。 転倒したのは散歩中だから、というわけでもないが、帰宅後、Henning Schmiedt の "Spazieren" を初…

"Chateau of Secrets" 雑感(3)

世間はきょうからゴールデンウィークだが、ぼくはきょうも出勤。いつもより帰宅が遅く、疲れた。いま、Henning Schmiedt の "Schnee" をBGMに流しながらリラックスしているところ。たしかに〈雪の音〉らしい。 きょうはまず、朝、バスの中から遠くのツツジに…