ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

Patrick Modiano の “Missing Person”(1)

1978年のゴンクール賞受賞作、Patrick Modiano の "Missing Person"(1978)を読了。仏語の原題は "Rue des boutiques obscures"。ご存じ『冬のソナタ』の下敷きになった作品である。さっそくレビューを書いておこう。Missing Person (Verba Mundi Book)作者…

Doris Lessing の “The Good Terrorist”(2)

Doris Lessing はご存じノーベル賞作家(2007年受賞)。が、恥ずかしながら、ぼくはいままで短編すら読んだことがなかった。そこで今回、〈文学のお勉強シリーズ〉の一環で本書に取り組んだというわけだ。 なにしろ1985年のブッカー賞最終候補作である。きっ…

Doris Lessing の “The Good Terrorist”(1)

1985年のブッカー賞最終候補作、Doris Lessing の "The Good Terrorist"(1985)をやっと読了。さっそくレビューを書いておこう。The Good Terrorist: A Thriller (Vintage International)作者:Lessing, DorisVintageAmazon[☆☆☆] 戦争も革命もテロも、その起…

"The Good Terrorist" 雑感 (2)

ボチボチ読んでいたが、やっと終盤に差しかかってきた。眠い目をこすりつつ、少しだけ、今までの内容を振り返ってみよう。 まず、看板に偽りあり、と言いたくなるほどテロの話題はなかなか出てこない。主人公 Alice をふくむコミュニストのグループが爆弾製…

"The Good Terrorist" 雑感 (1)

先週 Alice Munro の短編集を読みおえた翌日、青森に出かけた。前からぜひ、それも冬場に太宰治の生家、斜陽館を訪れたかった。 思ったほどの積雪量ではなかったが、それでも途中寄った弘前、五所川原、そして斜陽館のある金木はもちろん雪の中。五所川原に…

Alice Munro の “The Progress of Love”(2)

Alice Munro を初めて読んだのは5年前、大変遅ればせながら2013年正月のことだった。それが現時点で最新作の "Dear Life"(2012)。いたく気に入り(☆☆☆☆)、10月には "Dance of the Happy Shades"(1968)を通読。完全にノックアウトされましたね(☆☆☆☆★)…

Alice Munro の “The Progress of Love”(1)

Alice Munro の短編集 "The Progress of Love"(1986)を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Progress of Love作者:Munro, AliceVintageAmazon[☆☆☆★★★] 人生にはときどき、「永遠の一瞬」とでもいえるような瞬間がある。いつまでも心にのこり、なに…

Yiyun Li の “A Thousand Years of Good Prayers”(2)

え、あんた、まだこれを読んでなかったんですか、という声が聞こえてきそうですね。まことにお恥ずかしい次第だが、ほかにも読み洩らしている名作傑作は山ほどあり、これから少しずつ遅れを取り戻していくしかない。 さて、Yiyun Li の作品を読むのは "Gold …

Nadine Gordimer の “The Conservationist”(4)

最後の補足をしておこう。本書は1974年のブッカー賞受賞作だが、いまのところまだ邦訳は出ていないようだ。その理由はおそらく、「決して面白い読み物ではない」からだろう。要するに、「売れない」という判断が昔からあるのではないか。 ところが、内容はど…

Yiyun Li の “A Thousand Years of Good Prayers”(1)

あとひとつだけ Nadine Gordimer の "The Conservationist" について補足すべきことを思い出した。が、きのう第1回フランク・オコナー国際短編賞受賞作、ご存じ Yiyun Lin の "A Thousand Years of Good Prayers"(2005)を読了。早くも記憶が薄れかかって…

Nadine Gordimer の “The Conservationist”(3)

まず昨日の訂正から。2番めの引用箇所に If I had had my father's money とあったので、メモを確かめもせず、中間部分のエピソードもうっかり Mehring の息子の話だと勘違いしてしまった。実際は Mehring 自身が経験したことである。朝起きて気がつき、あ…

Nadine Gordimer の “The Conservationist”(2)

いやはや、これはムツカシかった! この数年読んだ本の中では、最高難度の部類に入ると思う。 悪戦したのはむろん、ぼく自身の貧弱な語学力のせいでもある。が、それを差し引いても、本書の難解さは単に語学だけの問題ではないかもしれない。 語学だけなら、…

Nadine Gordimer の “The Conservationist”(1)

1974年のブッカー賞受賞作、Nadine Gordimer の "The Conservationist" を読了。Gordimer は南アフリカの作家で、1991年にノーベル文学賞を受賞。本書はたぶん彼女の代表作のひとつだと思うが、まだ邦訳は刊行されていないようだ。さっそくレビューを書いて…