2021-01-01から1年間の記事一覧
Ivy Compton-Burnet(1892–1969)というイギリスの女流作家がいることを知ったのは、たぶん学生時代ではないか。必要があって英文学史の本を読んでいるとき、こんな作家もいる、くらいの扱いで名前を目にしたような気がする。 その後、小林信彦氏の『小説世…
Yaa Gyasi の作品は初読かと思ったら、5年前の夏、処女作の "Homegoing"(2016)を読んでいた。 いま振り返ると、当時はちょうどブッカー賞ロングリスト発表の直前ということで、現地ファンのあいだで入選を有力視されていた同書に興味をおぼえたようだ。レ…
今年のピューリツァー賞受賞作、Louise Erdrich の "The Night Watchman"(2020)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Night Watchman: Winner of the Pulitzer Prize in Fiction 2021 作者:Erdrich, Louise Little, Brown Book Group Amazon [☆☆☆…
今年のブッカー賞ロングリスト発表が迫ってきた(ロンドン時間7月27日)。ぼくは体調その他、諸般の事情でしばらく読書そのものからほとんど遠ざかっていたので、いま久しぶりに現地ファンの入選作予想をチェックしたところ、きのう読了した Leone Ross の …
きのう、Natasha Brown の "Assembly"(2021)を読了。Natasha Brown は既報のとおり、ガーディアン紙で紹介された今年の有望新人作家のひとりで、本書は彼女の処女作。イギリスの文学ファンのあいだでは、ブッカー賞ロングリストに入選しそうな作品として評…
これは今年の女性小説賞最終候補作だけど、じつは女性小説賞というのにはあまり興味がない。もう十年以上も昔の記事で紹介したことだが、当時のガーディアン紙に載った女流作家 A. S. Byatt のコメントを読んで、わが意を得たりと思ったものだ。The British …
William Faulkner の最後の長編 "The Reivers"(1962)を読了。Faulkner は本書の刊行後に他界したが、翌1963年、本書で "A Fable"(1954 ☆☆☆★★★)以来二度目のピューリツァー賞受賞。1969年には、"The Reivers" はスティーヴ・マックィーン主演で映画化され…
今年もこの季節、イギリスの文学ファンのあいだでは、ブッカー賞のロングリストに入選しそうな作品の予想で大いに盛り上がっている。世界のどの文学賞でも、本選はおろか、予選の前からこれほど下馬評の飛びかう賞はほかに例がないのではないか。 ぼくも久し…
イギリスの女流作家 Ivy Compton-Burnet(1892–1969)の "Manservant and Maidservant"(1947)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Manservant and Maidservant (New York Review Books Classics) 作者:Compton-Burnett, Ivy NYRB Classics Amazon [☆…
あああ、先日の国際ブッカー賞につづいて、ピューリツァー賞も予想が外れてしまった。といっても、本気で当てようと思っていたわけではなく、P Prize.com のランキングで上位の作品を4冊読んだだけ。 そのなかで、いちおう "Deacon King" に期待していたの…
ちょっと驚いた。「竜頭蛇尾のアレゴリー小説」とぼくがケチをつけた "At Night All Blood Is Black" (☆☆☆★)が、大方の予想に反して国際ブッカー賞を受賞するとは! もっとも、本書は2番人気だったので、なかには予想が的中した現地ファンもいる。ぼくは…
David Diop の "At Night All Blood Is Black" を読了。周知のとおり今年の国際ブッカー賞最終候補作で、仏語の原作 "Frère d'âme"(2018)は刊行年に Prix Goncourt des Lycéens(高校生のゴンクール賞)を受賞。英訳版(2020)も先日、ロサンゼルス・タイ…
ゆうべ、Yaa Gyasi の "Transcendent Kingdom"(2020)を読了。周知のとおり今年の女性小説賞最終候補作で、現地ファンの下馬評では2番人気だが、集計方法によっては1番人気にもなっている。また、気の早い同ファンのあいだでは、今年のブッカー賞ロングリ…
去る17日、ぼくと同じように、え?と驚いたひとがいるかもしれない。当日届くはずだった David Diop のペイパーバック版 "At Night All Blood Is Black" が、なぜか1ヵ月先に到着延期との知らせ。あわててキャンセルし、出品しているイギリスの店に発注しな…
Lydia Millet の "A Children's Bible"(2020)を読了。周知のとおり昨年の全米図書賞最終候補作で、ニューヨーク・タイムズ紙選年間ベスト5小説のひとつでもある。また P Prize. com の予想では、今年のピューリツァー賞「候補作」第3位にランクイン。さ…
これは2014年の全米批評家協会賞受賞作で、全米図書賞最終候補作およびブッカー賞一次候補作。そのころたいへん話題になっていたことは、あとで知った。ぼくは同年春から翌年の秋まで本ブログを休止。いまもそうだが、文学を通じて人間の本質がどうのこうの…
今年の女性小説賞最終候補作、Patricia Lockwood の "No One Is Talking About This"(2021)を読了。もっか、現地イギリスのファンのあいだでは1番人気である。さっそくレビューを書いておこう。 (追記:本書は後日、今年のブッカー賞ロングリスに入選)…
今回も禁をやぶってハードカバー。Patricia Lockwood の "No One Is Talking About This"(2021)をボチボチ読んでいる。ご存じ今年の女性小説賞最終候補作で、本ブログのリンク先 the Mookse and the Gripes によると、もっか1番人気。英米アマゾンでの評…
きのう、今年の国際ブッカー賞最終候補作、Benjamín Labatut の "When We Cease to Understand the World"(2020)を読了。原題は "Un Verdor Terrible"(2019)で、スペイン語からの英訳である。さっそくレビューを書いておこう。 When We Cease to Underst…
今年の国際ブッカー賞最終候補作、Benjamín Labatut の "When We Cease to Understand the Word"(2020)を読んでいる。原題は "Un Verdor Terrible"(2019)。スペイン語からの英訳である。なかなか面白い。現地ファンの下馬評では1番人気のようだ。 カバ…
きのう、James McBride の "Deacon King Kong"(2020)を読了。周知のとおり、ニューヨーク・タイムズ紙が選んだ昨年の年間ベスト5小説のひとつである。また P Prize. com の予想によると、ニューヨーク時間で明日4日に発表される今年のピューリツァー賞「…
相変わらず体調がパッとせず、今回もずいぶん予定より遅れてしまったが、なんとか Marilynne Robinson の "Lila"(2014)を読了。"Gilead"(2004)に始まり、おそらく "Jack"(2020)で最後と思われるギリアド四部作の第三作である。刊行年に全米批評家協会…
Maggie O'Farrell の "Hamnet"(2020)を読了。周知のとおり2020年の全米批評家協会賞ならびに女性小説賞の受賞作で、ニューヨーク・タイムズ紙が選んだ年間ベスト5小説のひとつでもある。さっそくレビューを書いておこう。 Hamnet: Winner of the Women's …
絶不調というほどではないが相変わらず不調。胃の痛みはまだ少し残っているし、風邪のほうも喉の痛みはなくなったものの、こんどは咳が出るようになった。喘息が再発しなければいいのだけど。 というわけで今週も読書はまったりペース。ご存じ Maggie O'Farr…
胃のほうは薬のおかげでだいぶ痛みが治まってきたのだけど、こんどはまた風邪をひいてしまい、まるで変声期のようなガラガラ声。微熱の一歩手前のような熱もある。コロナでないことを祈るばかりだ。 ともあれ、上の事情でボチボチ読んでいた Brit Bennet の …
この二週間ほどずっと胃が痛く、休み休みの読書になってしまった。きょう診察してもらったところ、どうやら逆流性食道炎の再発らしい。薬が効きはじめるまで我慢するしかなさそうだ。なにはともあれ、きのう Richard Russo の "Empire Falls"(2001)をやっ…
これは既報のとおり、昨年のギラー賞(Scotiabank Giller Prize)の受賞作、および全米批評家協会賞の最終候補作。ギラー賞はカナダで最も権威ある文学賞だけど、そう聞いてもピンとこない日本人読者がきっと多いはずだ。全米批評家協会賞にしても、〈アメリ…
これも長年の宿題だった。"The Amazing Adventures ...." や "The Corrections" ほどではないにしろやはり大作で、昔のピューリツァー賞受賞作(2003)。ぼくにとっていちばん積ん読になりやすいパターンだ。現代文学の場合、リアルタイムで読まなかった分厚…
ゆうべ、2020年のギラー賞受賞作、Souvankham Thammavongsa の "How to Pronounce Knife" を読了。これは先日受賞作が発表された2020年全米批評家協会賞の最終候補作でもある。カナダの新人作家 Souvankham Thammavongsa はタイのラオス難民キャンプで生まれ…
2003年のピューリツァー賞受賞作、Jeffrey Eugenides の "Middlesex"(2002)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Middlesex: A Novel (English Edition) 作者:Eugenides, Jeffrey 発売日: 2002/09/04 メディア: Kindle版 [☆☆☆★★]「わたしは二度生まれ…