ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

NoViolet Bulawayo の “Glory”(2)

この作家、初耳かと思ったら、過去記事を検索したところ、2013年のブッカー賞最終候補作 "We Need New Names"(2013 ☆☆☆★★)の作者だった。 拙文を読んで、なんとなく思い出した。いい作品だった。これは Bulawayo(1981– )のデビュー作で、彼女はジンバブ…

Shehan Karunatilaka の “The Seven Moons of Maali Almeida”(5)

表題作と "Treacle Walker" の比較をつづけよう。前回(4)では、そこにカオスがあるだけという小説よりも、カオスをなんとか収拾しようとする動きのあるほうを高く評価すべきだと述べた。 収拾だけでなく、カオスからの脱出の試みもあればさらにいい。煩悶…

Shehan Karunatilaka の “The Seven Moons of Maali Almeida”(4)

いつかも紹介した話だが、今年のブッカー賞のロングリストが発表される前、現地ファンのあいだでは、ディストピアを扱った候補作がどれくらい選ばれるだろうか、ということも話題のひとつになっていた。おそらく、ロシアによるウクライナ侵攻が背景にあった…

Shehan Karunatilaka の “The Seven Moons of Maali Almeida”(3)

この一週間、活字からほとんど離れていた。寝しなに『かがみの孤城』を読んでいたくらい。(一ヵ月以上もかかって、やっと文庫本上巻の半分まで到達。これから面白くなるのかもしれないけれど、相変わらず、つまらない)。 ひと息いれたわけは、ブッカー賞の…

2022年ブッカー賞発表とぼくのランキング

今年のブッカー賞は、スリランカの作家 Shehan Karunatilaka の "The Seven Moons of Maali Almeida"(2022)が受賞。本来なら「受賞!」と書くところだが、ふたつの理由で感嘆符はカットした。 まず、前回の記事で発表した予想どおりだったこと。予想の根拠…

NoViolet Bulawayo の “Glory”(1)と、今年のブッカー賞予想

今年のブッカー賞最終候補作、NoViolet Bulawayo の "Glory"(2022)を読了。Bulawayo(1981– )はジンバブエの作家で、本書は彼女の第2作。デビュー作 "We Need New Names"(2013 ☆☆☆★★)も刊行年にブッカー賞最終候補作に選ばれている。さっそくレビュー…

Shehan Karunatilaka の “The Seven Moons of Maali Almeida”(2)

Shehan Karunatilaka? 聞いたことのない作家だなと思いながら Wiki をチラ見。一瞬おいて、あ、と叫んだ。なんだ、"Chinaman"(2011)の作者だったのか。同書なら、いまはなき英連邦作品賞(Commonwealth Book Prize)の2012年受賞作ということで、デスク横…

Elizabeth Strout の “Oh William!”(2)と既読作品一覧

novel を「小説」と訳したのは坪内逍遥らしいが、"Moby-Dick" や "War and Peace" など質量ともに雄大な novel を小説と呼ぶのは、よく考えると、おかしい。さりとて、いまやほかに呼びようもなく、習慣的にそう分類している。 一方、なるほど「小説」とは言…

Shehan Karunatilaka の “The Seven Moons of Maali Almeida”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Shehan Karunatilaka の "The Seven Moons of Maali Almeida" (2022)を読了。Karunatilaka(1975– )はスリランカの作家で、2012年の Commonwealth Book Prize 受賞作 "Chinaman"(2011)でデビュー(未読)。ハードカバー裏…

Percival Everett の “The Trees”(2)

いま現地ファンの下馬評をチェックすると、今年のブッカー賞レースで先頭争いを演じているのは相変わらず、表題作と "Small Things Like These"(☆☆☆★★★)、"The Seven Moons of Maali Almeida"。3番めはまだ読んでいる途中だが優勝をうかがう勢いだ。なか…