ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

Orhan Pamuk の “Snow”(3)と既読作品一覧

今回のウクライナ侵攻では二次的な問題かもしれないが、トルコってフシギな国だな、と思ったひとも多いのではないか。実効性のほどはさておき、トルコがロシアとウクライナの仲介役となり、戦争当事国の外相会談がトルコでひらかれた。うん? なぜトルコなの…

Orhan Pamuk の “Snow”(2)

連日ウクライナ情勢の報道に接しているうち、過去記事で red or dead という問題にふれたことがあるのを思い出した。 red or dead とは、冷戦時代、西側の人びとが旧ソ連の核の脅威に屈して共産主義を選ぶか、それとも、自由と民主主義を守るために核戦争も…

Orhan Pamuk の “The Red-Haired Woman”(1)

きのう、Orhan Pamuk の近作 "The Red-Haired Woman"(2016)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Red-Haired Woman (Vintage International) 作者:Pamuk, Orhan Vintage Amazon [☆☆☆★★★] 現代のトルコを舞台にしたパムク版『オイディプス王』。こ…

Orhan Pamuk の “Snow”(1)

3回目のコロナ・ワクチン接種を受けたあと、高熱を発するなど副反応がひどく、体調が完全に回復するまでかなり時間がかかった。そのかんボチボチ読んでいたのが Orhan Pamuk の "Snow"(2002)。はて、どんなレビューになりますやら。 Snow (English Editio…

"Snow" 雑感と、文学におけるヒーローの死

力のない正義は無力であり、正義のない力は圧政的である。(パスカル『パンセ』) ウクライナでは連日、この箴言どおりの状況がつづいている。それは紀元前416年、ペロポネソス戦争のさなかに起きたメロス包囲戦を思わせるものだ。トゥキディデスの『戦史』…