ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

ブッカー賞

Nadifa Mohamed の “The Fortune Men”(1)

きのう、今年のブッカー賞最終候補作、Nadifa Mohamed の "The Fortune Men"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Fortune Men: Shortlisted for the Booker Prize 2021 作者:Mohamed, Nadifa Viking Amazon [☆☆☆★] 神の裁きに間違いはあり…

Damon Galgut の “The Promise”(2)

Damon Galgut、どこかで目にしたことのある名前だなと思って過去記事を検索すると、2010年のブッカー賞最終候補作、"In a Strange Room" の作者だった。 拙文を読みかえすうちにやっと思い出したのだけど、これはなかなかの秀作である(☆☆☆☆)。この年の受賞…

Richard Powers の “Bewilderment”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Richard Powers の "Bewilderment"(2021)を読了。これは今年の全米図書賞一次候補作でもあったが、そちらは二次で落選。さっそくレビューを書いておこう。 Bewilderment: A Novel 作者:Powers, Richard Norton & Company Amaz…

Anuk Arudpragasam の “A Passage North”(2)

Anuk Arudpragasam はスリランカ出身の若い作家で、表題作(2021)の前のデビュー作 "The Story of a Brief Marriage"(2016)は、毎年優秀な新人作家に与えられる Dylan Thomas Prize の最終候補に選ばれた。 などと知ったかぶりで書いたけど、もちろん読後…

Rachel Cusk の “Second Place”(2)

Rachel Cusk の作品を初めて読んだのは、読書メモによると14年前のことだ。当時すでに、彼女は Sarah Waters や David Mitchell などとならんで、すぐれた若手作家としての地位を確立していた。https://granta.com/products/granta-81-best-of-young-british…

2021年ブッカー賞ショートリスト予想

ブッカー賞ショートリストの発表日が迫ってきた(ロンドン時間9月14日)。一次候補作全13冊のうち、ぼくがいままで読んだのはたった4冊だけだが、いちおう現地ファンのまねをして、4冊のランキングがてら最終候補作を予想しておこう。1. The Promise(☆☆☆…

Damon Galgut の “The Promise”(1)

きのう、今年のブッカー賞一次候補作、Damon Galgut の "The Promise"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Promise 作者:Galgut, Damon Chatto & Windus Amazon [☆☆☆★★★] 国家間の条約はやぶるためにある、と俗にいわれるが、個人同士の場…

Anuk Arudpragasam の “A Passage North”(1)

きのう、今年のブッカー賞一次候補作、Anuk Arudpragasam の "A Passage North"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 A Passage North 作者:Arudpragasam, Anuk Granta Books Amazon [☆☆☆★★] 人生にはかならず、それまでの人生をふり返る瞬間が…

Rachel Cusk の “Second Place”(1)

今年のブッカー賞一次候補作、Rachel Cusk の "Second Place"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Second Place: Longlisted for the Booker Prize 2021 (English Edition) 作者:Cusk, Rachel Faber & Faber Amazon [☆☆☆★★] ふつう小説では、…

Leone Ross の “Popisho”(1)

今年のブッカー賞ロングリスト発表が迫ってきた(ロンドン時間7月27日)。ぼくは体調その他、諸般の事情でしばらく読書そのものからほとんど遠ざかっていたので、いま久しぶりに現地ファンの入選作予想をチェックしたところ、きのう読了した Leone Ross の …

Natasha Brown の “Assembly”(1)

きのう、Natasha Brown の "Assembly"(2021)を読了。Natasha Brown は既報のとおり、ガーディアン紙で紹介された今年の有望新人作家のひとりで、本書は彼女の処女作。イギリスの文学ファンのあいだでは、ブッカー賞ロングリストに入選しそうな作品として評…

Patricia Lockwood の “No One Is Talking About This”(2)

これは今年の女性小説賞最終候補作だけど、じつは女性小説賞というのにはあまり興味がない。もう十年以上も昔の記事で紹介したことだが、当時のガーディアン紙に載った女流作家 A. S. Byatt のコメントを読んで、わが意を得たりと思ったものだ。The British …

Patricia Lockwood の “No One Is Talking About This”(1)

今年の女性小説賞最終候補作、Patricia Lockwood の "No One Is Talking About This"(2021)を読了。もっか、現地イギリスのファンのあいだでは1番人気である。さっそくレビューを書いておこう。 (追記:本書は後日、今年のブッカー賞ロングリスに入選)…

Brandon Taylor の “Real Life”(2)

やっとブッカー賞の季節が終わった。ぼくは今回、春先に Hilary Mantel の "The Mirror & The Light"(2020 ☆☆☆★★)を読んだあと、ショートリストの発表まで高みの見物。おなじブッカー賞でも、過去の受賞作や候補作を catch up していた。 もう昔のように、…

2020年ブッカー賞発表とぼくのランキング

本日早朝(ロンドン時間19日)、ブッカー賞の受賞作が発表され、現地ファンの下馬評どおり、Douglas Stuart の "Shuggie Bain"(2020)が栄冠に輝いた。ぼくもいちおう本命に推していた作品なので、この結果に不満はない。 受賞理由は未読だが、どのエピソー…

Tsitsi Dangarembga の “This Mournable Body”(2)と今年のブッカー賞予想

いよいよブッカー賞の発表が迫ってきた(ロンドン時間19日)。ぼくは最終候補作全6作のうち、表題作もふくめ、なんとか5作読了。あと1冊、Diane Cook の "The New Wilderness"(2020)を読み残しているが、これは現地ファンの下馬評ではいちばん人気薄。…

Brandon Taylor の “Real Life”(1)

前回ふれた事情でイギリスに priority 便で注文した Brandon Taylor の "Real Life"(2020)が予想外に早く到着(さすが旧大英帝国!)。おかげで、てっきり17日とばかり思い込んでいたブッカー賞の発表(ロンドン時間19日)前に、なんとか読みおえることが…

Tsitsi Dangarembga の “This Mournable Body”(1)

予定より大幅に遅れてしまったが、なんとか Tsitsi Dangarembga の "This Mournable Body"(2018)を読みおえた。今年のブッカー賞最終候補作である。さっそくレビューを書いておこう。 This Mournable Body: SHORTLISTED FOR THE BOOKER PRIZE 2020 作者:Da…

Douglas Stuart の “Shuggie Bain”(2)

2013年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、David Constantine の "Tea at the Midland and Other Stories"(2012)の続きを1日1話ずつ読んでいたら、きょう、Tsitsi Dangarembga の "This Mournable Body"(2018)が届いた。さみだれ式に注文した今年…

Douglas Stuart の “Shuggie Bain”(1)

ゆうべ、今年のブッカー賞ならびに全米図書賞の最終候補作、Douglas Stuart の "Shuggie Bain"(2020)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Shuggie Bain: A Novel 作者:Stuart, Douglas 発売日: 2020/12/15 メディア: ペーパーバック [☆☆☆★★★] 裏切ら…

Maaza Mengiste の “The Shadow King”(2)

先日、やっと Douglas Stuart の "Shuggie Bain"(2020)が手元に届いた。さっそく読みはじめたが、期待にたがわず面白い。ご存じ今年のブッカー賞ならびに全米図書賞最終候補作である。史上初の二冠達成か、と現地ファンのあいだでは大変な評判になっている…

Maaza Mengiste の “The Shadow King”(1)

ゆうべ、今年のブッカー賞最終候補作、Maaza Mengiste の "The Shadow King"(2019)を読了。さっそくレビューを書いておこう。(後記:本書は2019年のロサンゼルス・タイムズ文学賞の最終候補作でもありました)。 The Shadow King: SHORTLISTED FOR THE BO…

Avni Doshi の “Burnt Sugar”(2)

介護問題が文学の題材として採りあげられるようになったのは、いつごろからだろうか。ぼくがいままで書きためたレビューで「介護」を検索したところ、いちばん古い作品は、Alice Munro の短編集 "Dance of the Happy Shades"(1968 ☆☆☆☆★)所収の 'The Peace…

Avni Doshi の “Burnt Sugar”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Avni Doshi の "Burnt Sugar"(2019)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Burnt Sugar: Shortlisted for the Booker Prize 2020 (English Edition) 作者:Doshi, Avni 発売日: 2020/07/30 メディア: Kindle版 [☆☆☆★★★] 聖…

"Burnt Sugar" と "Fortune Smiles" 雑感

きのう Adam Johnson の "Fortune Smiles"(2015)を読んでいたら、今年のブッカー賞最終候補作のひとつ、Avni Doshi の "Burnt Sugar"(2019) がやっと届いた。さっそく乗り換えて読みはじめると、なかなか面白い。I would be lying if I said my mother's…

David Mitchell の “The Bone Clocks”(2)

David Mitchell の手持ちの旧作はこれでやっとぜんぶ読了。足かけ10年で6冊読んだことになる。まことにお恥ずかしいペースだが、ここで記念にその6冊を刊行順に並べておこう。1."Number9Dream"(2001 ☆☆☆☆) 2."Cloud Atlas"(2004 ☆☆☆☆★) 3."Black…

David Mitchell の “The Bone Clocks”(1)

David Mitchell の "The Bone Clocks"(2014)を読了。2014年のブッカー賞一次候補作、および2015年の世界幻想文学大賞受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。 The Bone Clocks (English Edition) 作者:Mitchell, David 発売日: 2014/09/02 メディ…

"The Bone Clocks" 雑感

このところの急な冷え込みのせいか、ついに風邪をひいてしまった。症状から判断して、たぶんコロナではないと思うけれど、ぼくは微熱でもすぐに頭が痛くなるほうなので万事かったるい。 おかげで、ボチボチ読んでいた David Mitchell の "The Bone Clocks"(…

Peter Carey の “Oscar and Lucinda”(4)

Peter Carey の作品を読むのは10年ぶり3冊目。3冊のなかでは本書がいちばん出来がいい。最近 catch up したブッカー賞の受賞作・候補作に目を移しても、面白度という点では "Number9Dream"(☆☆☆☆)といい勝負。そちらのほうがぼく好みだが、本書のほうが面…

Peter Carey の “Oscar and Lucinda”(3)

今年のブッカー賞ショートリストは、現地ファンにとって大波乱だったようだ。ちょっと拾っただけでも、こんな悲痛な叫び声が上がっている。'What a mess - this year's booker shortlist is a complete disaster.' 'Wow - I'm in absolute shock.' 'This sho…