ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

全米図書賞

Julia Phillips の “Disappearing Earth”(1)

今年の全米図書賞最終候補作、Julia Phillips の "Disappearing Earth"(2019)を読了。彼女はブルックリン在住の新人作家で、本書はデビュー作。さっそくレビューを書いておこう。 DISAPPEARING EARTH 作者: JULIA PHILLIPS 出版社/メーカー: Knopf 発売日:…

Lisa Halliday の “Asymmetry”(2)と Sigrid Nunez の “The Friend”(2)

おとといの昼間、ジムで走りすぎたあと、同夜は元同僚と再会、ほぼ一年ぶりに飲みすぎてしまった。おかげで、きのうは膝が痛いうえに二日酔い。炬燵の中でぼんやり過ごしていたら、夕方になって大事件発生! 詳しくは書けないが、とにかく諸般の事情というや…

Sigrid Nunez の “The Friend”(1)

昨年の全米図書賞受賞作、Sigrid Nunez の "The Friend"(2018)を読了。さっそくレビューを書いておこう。(ペイパーバック版の表紙はきょう現在、アップ不可能。可能になり次第アップします)。 The Friend: A Novel 作者: Sigrid Nunez 出版社/メーカー: …

Phil Klay の “Redeployment”(2)とイラク戦争関連の小説

今年の全米図書賞は11月14日に発表。ちらっと検索したかぎり、Sigrid Nunez の "The Friend" が面白そうだが、今月はもう予算的に購入は無理。もしヤマカンどおり栄冠に輝いたら、来年2月に出るというペイパーバック版を待つとしよう。 The Friend: A Novel…

Phil Klay の “Redeployment”(1)

2014年の全米図書賞受賞作、Phil Klay の "Redeployment" を読了。Esi Edugyan の "Washington Black" が届き次第、そちらにすぐ乗り換えようと思ってボチボチ読んでいたのだが、受取予定日を過ぎたきょうになっても同書は未着。結局 "Redeployment" を読み…

Joyce Carol Oates の “Wonderland”(2)

Joyce Carol Oates はほんとうに息の長い作家だ。ざっと50年のキャリアを誇り、おん年80歳で現役バリバリ。 しかも、デビュー当時から現在にいたるまで終始一貫、評価の高い作品を書き続けている。それなのにまだノーベル賞を受賞していないとは、世界の文学…

Joyce Carol Oates の “Wonderland”(1)とワンダーランド四部作

きのう、1972年の全米図書賞最終候補作、Joyce Carol Oates の "Wonderland"(1971)を読了。周知のとおり、これは〈ワンダーランド4部作〉の掉尾を飾る作品でもある。既読3作のレビューもあわせて再録しておこう。Wonderland (The Wonderland Quartet)作…

Dave Eggers の “What Is the What”(2)

積ん読の山の中で、この本は前から気になっていた。前回アップしたのは Penguin 版だが、実際に読んだのは Vintage 版。あるとき、アマゾンUSでいろんな作品を検索するたびに、どういうわけかこの Vintage 版の表紙が目につくようになった。 なかなかのコワ…

Joyce Carol Oates の “Them”(2)

ううむ、さすが Joyce Carol Oates、モノがちがう! エクセルに打ち込んでいる読書記録によると、ぼくが☆☆☆☆★(約85点)を進呈したのは、Iris Murdoch の "The Bell"(1958)と A. S. Byatt の "Possession"(1990)以来、なんと2年ぶり。これにはぼく自身…

Joyce Carol Oates の “Them”(1)

きのう本書を読了。1970年の全米図書賞受賞作である。いつもならすぐにレビューを書くところだが、なぜか〈あとがき〉が気になり斜め読みしたところ、ぼく自身の感想をもう少し煮詰めたほうがいいなと思い直した。 その結果が以下の駄文だが、これを書いてい…

"Them" 雑感(3)

いやはや、これは読めば読むほどすごい作品だ! まず前回、「ジャンルとしては、今のところ、いちおう家庭小説かな」と断定を避けておいて正解。たしかに家庭小説の要素は濃いのだが、その後、青春小説や恋愛小説の要素も加わり、とりわけ後者はかなり強烈だ…

"Them" 雑感(2)

世間は3連休だったが、ぼくは退職前、最後の仕事のひとつでけっこう忙しかった。こんなとき、いつもならストレスがたまるものだが、もうじき辞めると思うとそれほど苦にならない。 "Them" のほうは、相変わらずカタツムリくんペース。が、それでもようやく…

"Them" 雑感(1)

昨年末から Joyce Carol Oates の "Them"(1969)を読んでいる。が、帰省や大掃除、正月は2日の午後に仕事初めといった具合で、なかなか先へ進まない。それでも改めて、Oates はすごい作家だなと実感している。 年譜によると、女史は1938年生まれ。同63年か…

Joyce Carol Oates の “Expensive People”(3)

宇和島に帰省3日目。ホームで母の話を聞いたり、買い物や、誰もいない実家の掃除や、墓掃除をしたり、けっこう忙しい毎日だ きょうはうれしい出来事があった。その昔ぼくもお世話になった鶴城幼稚園の写真を撮っていたら、たまたま先生がいらっしゃったので…

Joyce Carol Oates の “Expensive People”(2)

きょうから愛媛の田舎に帰省。途中、松山に寄り、ひさしぶりに「瓢月」で熱いうどんを食べた。おいしかった! 夕刻、宇和島着。母の入所している老人ホームを訪れたあと、実家でコンビニ弁当を食べながらこれを書いている。 初めてタブレットを使用。キー操…

Joyce Carol Oates の “Expensive People”(1)

1969年の全米図書賞候補作、Joyce Carol Oates の "Expensive People"(1968)を読了。さっそくレビューを書いておこう。Expensive People (The Wonderland Quartet)作者:Oates, Joyce CarolModern LibraryAmazon[☆☆☆☆] 世間一般に信じられている「真実」と…

Jesmyn Ward の “Sing, Unburied, Sing”(2)と、ニューヨーク・タイムズ紙選2017年ベスト5小説

まず表題作の続きから。前々回ふれたように、ぼくは Jesmyn Ward の旧作 "Salvage the Bones" が2011年の全米図書賞受賞作であることも、自分がそのレビューを書いたこともすっかり忘れていた。そこで、一体どんな作品だったのだろうと、当のレビューを読み…

Jesmyn Ward の “Sing, Unburied, Sing”(1)

きのう、今年の全米図書賞受賞作 Jesmyn Ward の "Sing, Unburied, Sing"(2017)を読了。Ward としては、"Salvage the Bones"(2011 ☆☆☆★)以来、2度目の同賞受賞である。ひと晩寝かせたところで、はて、どんなレビューになりますやら。Sing, Unburied, Si…

Victoria Connelly の “Love in an English Garden”(2)

いま読んでいるのは、今年の全米図書賞受賞作 Jesmyn Ward の "Sing, Unburied, Sing"(2017)。彼女としては、2011年の "Salvage the Bones"(☆☆☆★)以来、2度目の受賞である。 などとエラソーなことを言ってはいけない。じつは、"Salvage the Bones" のレ…

2017年ピューリツァー賞発表(2017 Pulitzer Prize for Fiction)

あれま、Colson Whitehead の "The Underground Railroad" が、今年のピューリツァー賞を受賞してしまった。昨年の全米図書賞に続いて2冠達成。ぼく自身は、そんなにすごい傑作とは思わなかったけれど、文学にはいろんな見方や評価があっていい。ともかく、…

2016年全米図書賞発表(2016 National Book Award Winner, Fiction)

つい先ほど(アメリカ東部時間11月16日)、今年の全米図書賞の受賞作が発表された。小説部門で栄冠に輝いたのは、大方の予想どおり Colson Whitehead の "The Underground Railroad"。米アマゾンやパブリシャーズ・ウィーク誌などでも、今年のベストテン小説…

Colson Whitehead の “The Underground Railroad” (1)

今年の全米図書賞最終候補作、Colson Whitehead の "The Underground Railroad" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Underground Railroad: Winner of the Pulitzer Prize for Fiction 2017作者:Whitehead, ColsonFleetAmazon[☆☆☆★★] アメリカの奴…

Jacqueline Woodson の “Another Brooklyn” (1)

ゆうべ、今年の全米図書賞の最終候補作、Jacqueline Woodson の "Another Brooklyn" を読了。すぐにレビューを書きたかったのだが、いつも駄文のわりに時間がかかるのであきらめた。ひと晩寝かせた効果はあるでしょうか。Another Brooklyn: A Novel (English…

Lauren Groff の “Fates and Furies” (1)

本書は周知のとおり、昨年の全米図書賞と今年の全米批評家協会賞(対象はともに2015年の作品)の最終候補作である。さて、ひと晩寝かせたところでレビューを書けるかどうか。Fates and Furies作者:Groff, LaurenRiverhead BooksAmazon[☆☆☆★★★] 泣ける小説だ…

Joyce Carol Oates の “A Garden of Earthly Delights” (1)

Joyce Carol Oates の第2作、"A Garden of Earthly Delights" (1967) を読了。1968年の全米図書賞最終候補作である。さっそくレビューを書いておこう。A Garden of Earthly Delights (The Wonderland Quartet)作者:Oates, Joyce CarolModern LibraryAmazon[…

Dave Eggers の “A Hologram for the King” (1)

Dave Eggers の "A Hologram for the King" を読了。昨年の全米図書賞最終候補作で、ニューヨーク・タイムズ紙や、パブリシャーズ・ウィークリー誌、アメリカおよびカナダのアマゾンの年間ベスト、Michiko Kakutani の Favorite Books にも選ばれている。さ…

2012年全米図書賞発表 (2012 National Book Award Winner)

先週、林家たい平の落語を聞きに行ったら、いま公開中の映画では『のぼうの城』がいちばんおもしろい、と話していたので、きょう、かみさんと一緒に観に行った。現代風の軽いセリフが気になったが、一種の戯作的効果をねらってのことだろう。けっこう楽しめ…

Ben Fountain の “Billy Lynn's Long Halftime Walk” (1)

これを書いている時点ではまだ、今年の全米図書賞は発表されていないようだが、私見によれば「大本命」かも、と思われる Ben Fountain の "Billy Lynn's Long Halftime Walk" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。(追記:本書は2016年、ア…

Kevin Powers の “The Yellow Birds” (1)

今年の全米図書賞候補作、Kevin Powers の "The Yellow Birds" を読了。さっそくレビューを書いておこう。(追記:本書は2017年、アレクサンドル・ムーア監督によって映画化されました)。The Yellow Birds: A Novel作者:Powers, KevinLittle, Brown and Com…

Louise Erdrich の “The Round House” (1)

今年の全米図書賞候補作、Louise Erdrich の "The Round House" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Round House: A Novel作者:Erdrich, LouiseHarperAmazon[☆☆☆★★★] コアにあるのは少年の通過儀礼。だが、20世紀後半、ネイティヴ・アメリカンがま…