ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

20世紀および現代イギリス文学

Vanessa Gebbie の “The Coward's Tale” (1)

Vanessa Gebbie の長編デビュー作、"The Coward's Tale" をやっと読みおえた。イギリスのファンのあいだでは、今年のブッカー賞のロングリストに選ばれるかも、と話題になったこともある作品である。さっそくレビューを書いておこう。The Coward's Tale作者:…

Isabel Wolff の “A Vintage Affair” (1)

Isabel Wolff の "A Vintage Affair" を読了。さっそくレビューを書いておこう。A Vintage Affair作者:Wolff, IsabelHarperCollinsAmazon[☆☆☆☆] 読みはじめたときから、そしてなかんずく読後、いっとき幸せな気分にひたれ、人生がちょっぴり楽しく思える「元…

Penelope Lively の “How It All Began” (1)

Penelope Lively の最新作、"How It All Began" を読了。さっそくレビューを書いておこう。How It All Began作者:Lively, PenelopePenguinAmazon[☆☆☆★★] ペネロピ・ライヴリー健在なり! 小品ながら文字どおり「小の説」という小説の極致をきわめた佳篇であ…

Jojo Moyes の “Me Before You” (1)

イギリスの最新ベストセラー、Jojo Moyes の "Me Before You" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。(後記:本書は2016年、テア・シャロック監督によって映画化され、日本でも『世界一キライなあなたに』として公開されました)。Me Before…

Barry Unsworth の “The Quality of Mercy” (1)

Barry Unsworth の最新長編、"The Quality of Mercy"(2012)を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。The Quality of Mercy作者:Unsworth, BarryHutchinsonAmazon[☆☆☆] 1992年のブッカー賞受賞作、"Sacred Hunger" の後日談。断片的に…

Elizabeth Bowen の "A World of Love"

いやはや、とんだ連休だった。当初のもくろみでは Philp Hensher の "The Northern Clemency" を読破するはずだったが、完全に中断。結局、「自宅残業」に明け暮れ、文学とはまったく縁のない毎日だった。 うれしかったのは、四万十市にいる畏友から久しぶり…

Graham Greene の "The Honorary Consul" 

昨晩、志賀高原から帰ってきた。当初はホテルで本を読もうと思っていたが、昼間に滑りすぎて頭が働かずダウン。そこで今日は3年前、「愛と現実の矛盾」と題してアマゾンに投稿、その後削除したレビューでごまかそう。The Honorary Consul作者:Greene, Graha…

Alan Sillitoe の "The Loneliness of the Long Distance Runner"

もっか猫の手も借りたいほど忙しく、中断している長編の代わりにせめて短編集でも読みたいところだが、ぼくは物覚えが悪く、最初のほうに読んだ短編がどんな作品だったか忘れてしまうことが多い。それゆえ、短編集のいい読者とは言えないが、シリトーの『長…

Evelyn Waugh の "Decline and Fall"

06年に続いて05年に読んだ本のベスト3を選ぼうと思ったが、ぼくがリアルタイムで英米の現代文学を追いかけるようになったのはこの2、3年のことで、05年はまだ旧作が中心だった。たとえばイーヴリン・ウォーなども一例で、以下は、「奇想と常識と」と題し…

D. H. Lawrence の “The Rainbow”

ロレンスは学生時代の夏、"Lady Chatterley's Lover" を読んで以来、なんとなく夏読書向きのイメージがある。8年前に突然、海外文学に狂いはじめてから、夏になると英文学の古典としては、最初は E. M. フォースターやジョイス、コンラッド http://d.hatena…

D. H. Lawrence の “Aaron's Rod”(1)

D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" を読了。ロレンス7作目の長編(22)で、彼の恋愛哲学、人間観が色濃く打ちだされた問題作だと思う。Aaron's Rod: Cambridge Lawrence Edition; Revised (Classic, 20th-Century, Penguin)作者: D. H. Lawrence,Mara Kalnin…

Margaret Drabble の "A Summer Bird-Cage"

Margaret Drabble の "A Summer Bird-Cage" を読了。題名に summer のついた未読の本はまだ何冊か手元にあるが、本書でとりあえず今年の「夏シリーズ」はおしまい。A Summer Bird-cage作者:Drabble, MargaretPenguinAmazon[☆☆☆★★] たわいもない小説だ。しか…

Elizabeth Taylor の "In a Summer Season" 

いよいよ夏到来。そこでしばらく、題名に summer のついた本を読むことにした。In a Summer Season (Virago Modern Classics)作者:Taylor, ElizabethViragoAmazon[☆☆☆★★] 二部構成だが、前半は長大なイントロ。とくに事件らしい事件もなく、各人物の性格や心…

Trezza Azzopardi の "Remember Me"

要するに "Eve Green" の場合、主人公の娘の両親に関する謎が次第に解き明かされるのはいいのだが、回想形式なのでサスペンス味は薄いし、示された真相に深い意味があるとは言えないのが難点だ。それにひきかえ、娘の知りあいの美少女が突然失踪する事件のほ…

Joseph Conrad の "Lord Jim"

この三連休、世の読書人は最高の毎日だったろうが、ぼくは土曜出勤の上、今日の午前中まで「家庭内残業」に明け暮れた。おかげで、ただでさえボケている頭が朦朧としている。よって今日は前回の続き。Modern Classics Lord Jim (Penguin Modern Classics)作…