20世紀および現代フランス文学
ああ、やっぱり Anna Burns の "Milkman" (2018)がブッカー賞に引き続き、全米批評家協会賞も獲ってしまいましたね。前回も書いたとおり、まず順当な結果だろう。 ちなみに過去、同賞とブッカー賞のダブル受賞に輝いた作品は2冊ある。 ぼくの独断と偏見に…
とても面白い本を読んでいるとき、過去記事の続きを書くのは面倒くさいものだ。もっか取り組んでいるのは、Orhan Pamuk の "The Museum of Innocence"(原作2008、英訳2009)。すこぶるつきのメロドラマだが、近代文化と古い伝統との衝突など、いろいろ考え…
きのう、今年の全米批評家協会賞(対象は昨年の作品)の最終候補作、Patrick Chamoiseau の "Slave Old Man" を読了。Patrick Chamoiseau は1992年に "Texaco" という作品でゴンクール賞を受賞したこともある作家で、カリブ海のマルティニーク島出身。本書は…
ゆうべ、Leila Slimani の "The Perfect Nanny" を読了。2016年のゴンクール賞受賞作、"Chanson douce" の英訳版である。巻頭の紹介によると、彼女はモロッコ出身の若手作家で、モロッコ人の女流作家が同賞を受賞したのは初めてのことらしい。この英訳版は昨…
ゆうべ、愛媛の田舎からやっと帰ってきた。久しぶりに長い帰省とあって、本を3冊バッグに忍ばせたのだが、最初の、それもいちばん薄いやつをまだ読みおえていない。 今回は、母が新しい高齢者介護施設に引っ越しすることになり、その手伝いが帰省の主目的。…
ご存じフランスのノーベル賞作家、Patrick Modiano の "Villa Triste"(1975)を読了。さっそくレビューを書いておこう。Villa Triste: A Novel作者:Modiano, PatrickOther PressAmazon[☆☆☆★★] あの夏、ぼくは18歳。アルジェリア戦争の災禍を逃れ、遠くにス…
ああもう、先月ハワイに出かけてから2週間もたってしまった。ほぼ40年ぶりの海外旅行で大興奮したというのに、記憶がどんどん薄れていく。息を切らしながら登ったダイヤモンドヘッド。あれはいったい何だったんだろう。 と、それと似たような思いが積もり積…
今回のハワイ旅行の友に Modiano を選んだのは、本のサイズが軽薄短小だったから。Modiano は旅の直前にも読んだばかり。同じ作家のものは内容がある程度予測できるので、ふだんはなるべく連続して読まないようにしているのだが、旅行となると話は別。自分好…
きょうは本当は "Dora Bruder" の続きを書くまわりなのだが、ゆうべ、ハワイ旅行の帰りに読みはじめた、同じく Patrick Modiano の "In the Café of Lost Youth"(2007)を読了。記憶が薄れないうちに、そちらのレビューを書いておこう。In the Café of Lost…
きのうハワイから帰ってきた。ダイヤモンドヘッドに登り、パールハーバーのツアーに参加した以外は、観光らしきこともせず、ショッピングも ABC Stores でチョコレートをお土産に買っただけ。あとはのんびりワイキキビーチで本を読んでいた。 帰りの機内で読…
きのうはぼくの最終出勤日だった。40年近く勤めた職場とも、いよいよオサラバ。昼前に帰宅し、かみさんともども、シャンパンで祝杯をあげた。 老後の予定は特にない。とりあえず、きょうの午後から、ほぼ40年ぶりにハワイに出かけ、4月には愛媛の田舎に帰省…
ゆうべ、Patrick Modiano の "Suspended Sentences"(1993)を読了。仏語の原題は "Chien de printemps"。3作の中編 "Afterimage" "Suspended Sentences" "Flowers of Ruin" を一冊にまとめたもので、表題作以外の原題は "Remise de peine"(1988)、"Fleur…
先週は退職前の歓送会やら、財布を落とすやら!、何かとあわただしい毎日だった。 さて、Patrick Modiano もご存じノーベル賞作家(2014年受賞)。「も」というのは、本ブログの数少ないリピーターのみなさまならお気づきのとおり、ぼくはこのところ、〈文学…
1978年のゴンクール賞受賞作、Patrick Modiano の "Missing Person"(1978)を読了。仏語の原題は "Rue des boutiques obscures"。ご存じ『冬のソナタ』の下敷きになった作品である。さっそくレビューを書いておこう。Missing Person (Verba Mundi Book)作者…
2014年にノーベル文学賞を受賞したフランスの作家、Patrick Modiano の "Paris Nocturne" (2003) を読了。さっそくレビューを書いておこう。Paris Nocturne: A Novel (The Margellos World Republic of Letters)作者:Modiano, PatrickYale University PressA…
Makine を読むのは、先日レビューを再録した "Dreams of My Russian Summers" (1995) に続いて8年ぶり2冊目。以前は書きもらしていたが、同書は95年のゴンクール賞受賞作である。『フランスの遺産』というタイトルで邦訳も出ているようだ。 が、日本ではあ…
2015年の国際ダブリン文学賞(International Dublin Literary Award)最終候補作、Andrei Makine の "Brief Loves That Live Forever" を読了。フランス語からの英訳作品である。さっそくレビューを書いておこう。Brief Loves That Live Forever作者:Makine,…
まずブッカー賞の話題から。ぼくはアンテナに登録している現地ファンのブログを参考にしながら、ロングリストにノミネートされそうな有資格候補作を何冊か読んでいたのだが、当たったのは1冊だけ。"The Sellout" も有資格だとは思いもよらなかった。 例によ…
帰省2日目。きのう飛行機の中で読みはじめた Andre Maurois の “Climates”を読了。米アマゾンが選んだ去年12月の優秀作品だが、原書が刊行されたのは1928年で、フランス語からの新訳である。さっそくレビューを書いておこう。Climates: A Novel作者:Maurois…
今日も家に帰る途中、〈スタバ〉に寄って読書。Irene Nemirovsky の "All Our Worldly Goods" を意外に早く読みおえることができた。仏語の原作は作者の死から5年後、1947年に出版され、英訳の本書ハードカバーは2008年刊。さっそくレビューを書いておこう…
まず去年の3月11日のブログを引用しよう。「いや怖かった、今日の地震。生きた心地がしなかった。こんな中でもアクセスしてくださったみなさん、アクセスされたということは大丈夫だったんですね。こんな日に記事を書くなんて不謹慎とは思ったが、今は夜中…
年末年始の休みを利用した「文学の冬」シリーズで、仏独伊に続いて読んだのは露西亜の文学作品。といっても、正確にはロシア人作家がフランス語で書いた小説だ。1995年のゴンクール賞受賞作、および1997年の全米批評家協会賞最終候補作である。Dreams Of My …
世間は三連休だったと思うが、ぼくは土曜出勤の上、昨日おとといの午前中は「自宅残業」。さすがに午後からは仕事をする気になれず、いろいろな理由があってアラン=フルニエの『グラン・モーヌ』を読んでいた。The Lost Estate (Le Grand Meaulnes) (Penguin…
仕事の目途はだいぶついたのだが、相変わらず多忙で本が読めない。またまた昔のレビューを引用することになってしまった。March: A Novel作者:Brooks, GeraldinePenguin BooksAmazon[☆☆☆★★] 06年度のピューリッツァー賞受賞作。またもや南北戦争の話かと、大…