今度は「タイム」誌選定の年間ベスト10の中から Martin Amis の "House of Meeting" を読んでみた。http://www.time.com/time/specials/2007/top10/article/0,30583,1686204_1686244_1691860,00.html 一昨年にもガーディアン紙で選ばれているので、二年連続の優秀作ということになる。http://books.guardian.co.uk/booksoftheyear2006/story/0,,1973636,00.html
House of Meetings (Vintage International)
- 作者: Martin Amis
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 2008/01/08
- メディア: ペーパーバック
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マーティン・エイミスのこの本は前から知っていたが、どうも食指が動かなかった。今さら旧ソ連の強制収容所の話といっても新味を出すのは難しいだろうし、旧作から判断して、エイミスがドストエフスキーのように人間に関する真実を鋭く追求するはずはないと思っていたからだ。今回、ペイパーバックで読める年間優秀作品ということで取り組んでみたが、結果は残念ながら予想どおりだった。
滑り出しは上記の興味もあってなかなか面白い。が、そのうち作者の意図が本格的な人間観察はもちろん、ソルジェニーツィンのような告発にもないことが分かり、あとはどんな仕掛けが待っているのだろうと期待して読みつづけたが、「面会の館」で弟夫婦の間に起きた「事件」の真相を聞いても、だから何なんだとしか思えなかった。
歴史的政治的な背景をうまく絡めたメロドラマと言いたいところだが、それにしては主人公の内省が重すぎて楽しめない。さりとて、その重みが人生の深い思索に通じているわけでもないので共感や感動も得られない。要するに中途半端なのだ。これならいっそ、同じロシア物でもメロドラマに徹した James Meek の "The People's Act of Love" のほうが単純明快でよかったのではないか。
- 作者: James Meek
- 出版社/メーカー: Canongate Books Ltd
- 発売日: 2006/12/04
- メディア: ペーパーバック
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…昔のレビューだが、これはまあ一種の文芸エンタテインメントであり、"House of Meetings" とは別の意味で深みがない。革命や収容所などロシア物の定番は、少なくとも英米の作家にはもはやハードルが高すぎるのかもしれない。(追記:本書は2005年のブッカー賞ロングリストにノミネートされました)。