ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Rupert Thomson の "Death of a Murderer"

 ガーディアン紙の年間ベスト10に選ばれた Rupert Thomson の "Death of a Murderer" は、今年のコスタ賞候補作でもある。惜しくも受賞は逃したが、なかなか味わい深い作品で楽しかった。

Death of a Murderer

Death of a Murderer

[☆☆☆★★] 題名からミステリ的興味をそそられるが、その期待はいい意味で裏切られる。イギリス中を震撼させた凶悪な女殺人犯が長い服役の末に死亡。夜間、病院の霊安室で警備についた警官が少年時代から今までの人生をふりかえる。悪友とやってのけた冒険、昔の恋人との出会いと別れ、度重なる昇進試験の失敗、軋みを生じるようになった結婚生活、ダウン症の子供をかかえた苦しみ…どのエピソードをとっても緊張感があって面白い。この緊張感をもたらすものは、ひとつには稀代の殺人鬼の死体と同室にいるという背景であり、あとひとつは、それぞれの話が警備業務の時間進行に合わせて巧みに織りこまれるという構成の妙だ。服役中の女を事情聴取したときの思い出など事件の内容もいくつか紹介されるが、謎解きというほどではない。異様な雰囲気の中で回想を続ける警官の人生と一夜の物語である。英語は標準的で読みやすい。

 …もっと詳しく分析しようと思ったが、しばらくパソコンを修理に出すことになったので、この続きはまた後日。