このところ「自宅残業」と内職で大忙しだったが、寝る前に読みつづけていた Andre Aciman の "Call Me by Your Name" をやっと読了した。
追記:本書は2018年に映画化され、アカデミー賞にノミネート。
- 作者:Aciman, André
- 発売日: 2008/01/22
- メディア: ペーパーバック
…どこまでネタをばらしていいのか困ってしまう作品だ。ペイバーバックの裏表紙に載っている賛辞を読んでも、見事に核心部分を隠していることが分かる。ところが、本書を年間優秀作品に選んだ "Publishers Weekly" 誌の寸評は、形容詞一語でずばり内幕を暴露している。それがきっとあちらでは惹句なのだろうが、日本では逆効果かもしれないと保守的なぼくは考え、「読者によっては拒否反応を示すものかもしれない」「尋常ならざる要素」としか書かなかった。付け加えるなら、表紙の写真を見ただけでピンとくる読者もいることだろう。これ以上は書けない。
問題は、その「異常な要素」をどう評価するかだ。「普通の恋愛小説としても上出来の部類に入る」ことは間違いない。ただ、みずみずしい感覚で綴られた恋愛心理、とりわけ、後日談で示される胸を締めつけられるような純情も含めて、それはやはり「お定まりの設定」と言わざるをえない。そのありふれた話を一気に非凡な作品たらしめているのが…「異常な要素」なのだ。
核心部分の評価は好みによって分かれるかもしれないが、好みに関係のない話をすると、たしかに「異常」な世界ではあるのだが、それは人生に関する世間一般の常識をくつがえすような意味での「異常」さではない。現代作家の通弊とも言えるこの欠点に目をつぶれば、そして、「普通の恋愛小説」としての凡庸な設定にも目くじらを立てなければ、これはけっこう楽しめる作品である。ざっと検索したかぎり、まだ映画化の予定はないようだが、霊界のヴィスコンティかアントニオーニにでも監督を頼みたいところだ。主役はもちろん、両監督の作品に出演したころのアラン・ドロン!
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