しばらく前、Lisa See の "Peony in Love" に始まり、永遠の愛という共通テーマで『コレラの時代の愛』や『嵐が丘』を採りあげたが、去年、「永遠の愛」と題してアマゾンに投稿したレビューがあるのを思い出した。
- 作者: Catherine Ryan Hyde
- 出版社/メーカー: Doubleday
- 発売日: 2006/07/03
- メディア: ペーパーバック
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…英語の動詞の時制に現在進行形というのがある、と習ったのは中1のときだった。大昔のことなので詳しい授業内容は忘れてしまったが、進行形を作れる動詞と作れない動詞の違いについてまでは教わらなかったような気がする。ただ、「日本語には、現在形と現在進行形の違いを示す正確な表現がない」という話だけは、教えてくれた先生のそのときの表情も含めて妙に憶えている。
やがて、いつのことかは記憶にないが、いわゆる動作動詞と状態動詞の違いが進行形に関係することを習うわけだが、その違いのいちばん簡単な説明は、「瞬間的に中断できるかどうか」だろう。walk や run なら途中でぱっとやめて、またぱっと再開できるが、love となるとそうは行かない。惚れた相手に飽きがきて、そのうちまた焼けぼっくいに火がつくことはあっても、恋心が瞬間的に燃え上がったり消えたりすることは考えにくい。
そういう観点から本書の題名 "Love in the Present Tense" を見ると、これはなかなか意味深長だ。上のレビューでは、「テーマは題名どおり『現在時制の愛』、つまり永遠の愛だ」と乱暴に書いてしまったけれど、これは、英語の動詞の現在形には永遠の真理を示す用法があることを前提としたもので、同じ現在時制でも、進行形に近いような love もある。つまり、刹那的な関係。作者はその二つの愛、永遠の愛と刹那的な愛をここで書きわけているのだ。
「そのコントラストが鮮やか」とも言えるが、いささか図式的という見方もあるだろうし、作者自身が本書の世界に酔ってしまい、細部の詰めを怠っている点が気になる。それより何より、"Peony in Love" と同じく、永遠の愛という「テーマがテーマだけに食傷気味」で、「ああまたか」と思う読者も多いことだろう。が、こんなメルヘンのような物語は斜に構えず、「一服の清涼剤」として楽しむに限る。割り切って読めば、"Peony in Love" もそうだが、ぼくのようなへそ曲がりでも「そこそこ楽しめる」ものだ。(これは現代の作品の通弊かもしれないけれど)。