今年の国際IMPACダブリン文学賞受賞作、Rawi Hage の "De Niro's Game" を読了。同賞にふさわしく、レバノンとフランスを舞台にしたインターナショナルな佳作である。

- 作者: Rawi Hage
- 出版社/メーカー: Old Street Publishing
- 発売日: 2008/05/01
- メディア: ペーパーバック
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…去年の受賞作、Per Petterson の "Out Stealing Horses" (詳細は昨年10月11日の日記http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20071011/p1)もそうだったが、ダブリン文学賞は日本ではさほど話題にならないものの、知らない作家のいい作品を選んでくれるので文学界の穴馬的な存在である。Rawi Hage がこの賞を取らなければ、レバノン出身の作家の作品に接する機会なんて、ついぞ訪れなかったかもしれないし、しかも読んでみれば望外の佳作。洋書オタクとしては、こんなにうれしいことはない。Per Petterson の本はその後、ニューヨーク・タイムズ紙の年間優秀作品にも選ばれたくらいだから、本書もいずれ各メディアで高く評価されそうな気がする。
ぼくの感想は上のレビューに尽きているが、付け加えるなら、いざ戦争に巻きこまれた人間の実態とは、案外こんなものかもしれないな、ということだ。戦争の大義について考えることもなく、爆弾の雨の中でも女に恋をし、友人のことを思い、肉親の死に呆然となり、時に必死で身近の守るべき人間を守ろうとする。
ともあれ、本書は『冒険者たち』と『ディア・ハンター』にフィルム・ノワールを混ぜ合わせたような作品だ。よくは知らないけど、最近評判のリッカルド・スカマルチョでも主人公にすえれば、恋と友情を描いた青春戦争映画として売れるかもしれない。もしそうなったら、もちろん、ロバート・デ・ニーロにも登場してもらいたいものだ。