Karen Kingsbury の "Summer" を読了。最後は涙が止まらなくなり、これが電車の中でなくて本当によかった。
- 作者: Karen Kingsbury
- 出版社/メーカー: Tyndale House Pub
- 発売日: 2007/08/21
- メディア: ペーパーバック
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調べてみるとキングズベリーは有名なキリスト教作家で、いろいろなシリーズを書いている。バクスター家の物語に限っても、まず Redemption Series 5冊、次いで Firstborn Series 5冊、そしてこの Sunrise Series の4作目が今年9月に刊行予定とか。しかも米アマゾンでは、どのシリーズの既刊も高い評価を受けているようだ。別シリーズの作品だが、昨年10月8日の日記にも書いたように、"Ever After"は去年、Christian Book Award の大賞に選ばれている。
ぼくは同じ作家の作品を続けて読まない主義なので、"Sunrise" に取りかかるのは来年以降のことになりそうだが、向こうではこの「愛と救済の物語」シリーズにハマっている読者が多いだろうな、という気がする。家族の死や病気、事故など、過去に迎えた大きな試練への言及がいくつかあり、最初から読んでいる読者なら思わずにやっとするのではないか。
つまりキングズベリーは、シリーズであることを意識しながら書いているわけだが、本書は単独の作品としてもよく出来ている。ほかの作品もきっとそうだろう。少なくとも、ここにはそう思わせるだけの感動がある。
その感動は「本質的には信仰」から得られるものだが、ぼくのように「信者でなくても深く心を揺り動かされずにはいられない」のだから、信者が読めばなおさら相当なインパクトがあるだろうと想像できる。そういう宗教的な感動を提供し続けているのがキングスベリーであり、そんな作家を読み続けている多数の読者がアメリカの中にいる。これまた想像にすぎないが、たぶん事実だろう。してみると、Willam P. Young の "The Shack" を読んで感じたように、ひょっとしたら、「ピルグリム・ファーザーズの時代以来、アメリカは宗教国家であり続け、今日も国民の間にキリスト教が根強く浸透している」のかもしれない。
むろん、キングスベリーは、弁神論など文学的に深い主題を追求するタイプの作家ではない。その意味では通俗的であり、「類型的」とも言える。だからぼくは途中、いささか斜に構えて読んでいたのだが、難病物の定石を踏んでいるとはいえ、赤ん坊誕生のくだりに至り、どうしても「涙が止まらなくな」った。「最大の喜びは最大の悲しみの中にある」。そのことに純粋に胸を打たれたのだ。
本書がこれだけすばらしい出来なのだから、1作目の "Sunrise" もきっと秀作にちがいない。いずれ落ちこんだときにでも読んでみよう。「宗教的な感動」もさることながら、そんな誘惑に駆られるところにどうやらキングズベリー人気の秘密がありそうだ。