Helen Cross の "My Summer of Love" を読了。「夏シリーズ」第4弾だが、今回はいささか期待はずれだった。

- 作者: Helen Cross
- 出版社/メーカー: Bloomsbury Publishing PLC
- 発売日: 2002/06/03
- メディア: ペーパーバック
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…映画化されているとは知らずに読みはじめた。日本では未公開のようだが、たしかにレズ行為をはじめ、淫行暴行など絵になる場面が多く、その意味ではドラマティックで面白い。が、青春風俗小説とでもいうのか、若者の生態は活写されているものの、主人公が自暴自棄におちいる原因が今ひとつ定かではない。孤独感にしろ絶望にしろ、そういう動機をとことん描いてこそ、優れた青春小説たりうるのではないだろうか。
スロットマシン好きの娘が主人公ということで、ブルック・シールズ主演の『ピンボールの青春』を思い出したが、昔BSで観ただけなのに、あちらのほうがよほど強烈だった。数々のピンボール名人との対戦に、少女の青春が見事に凝縮されていたからだ。それに較べ、本書には「ひと夏を鮮やかに象徴する事件がない」。「禁断の恋」を描いた夏物語としても、Andre Aciman の "Call Me by Your Name" のほうが数段上である。http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20080331/p1
わが夏をあこがれのみが駆け去れり麦藁帽子被りて眠る
寺山修司の名歌だが、ぼくはその小説版が読みたい。主題もおもむきも異なるが、"Call Me by Your Name" は、寺山の歌と同じく青春のインパクトを感じさせる秀作である。