Alberto Moravia の "Contempt" を読了。モラヴィアを読むのは3年ぶりだが、期待どおりオモロー!
追記:本書は1963年に映画化され、翌年、日本でも「軽蔑」として公開されました。監督はジャン=リュック・ゴダール。

Contempt (New York Review Books Classics)
- 作者: Alberto Moravia,Tim Parks,Angus Davidson
- 出版社/メーカー: NYRB Classics
- 発売日: 2004/07/31
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…ぼくは海外の純文学に凝りはじめてから3年前まで、毎年夏になるとモラヴィアを英訳で読んでいた。それが諸般の事情でしばらく遠ざかっていたのだが、先週、ヨーロッパの香りがする Abha Dawesar の "That Summer in Paris" を読んでいるうちに、その「繊細なタッチでつむぎだされる心理の糸」から、そう言えば…と、このイタリアの巨匠を思い出した次第。
『軽蔑』は彼の代表作の一つだが、今まで邦訳も含めて未読だった。中学生のころ、田舎の本屋で角川文庫版を見かけたのがモラヴィアの存在を知ったきっかけで、たしか表紙に彼の肖像写真があしらわれていたと記憶する。その顔と『軽蔑』というタイトルが妙に印象的で、結局そのとき買い求めはしなかったものの、なぜかずっと気になっていた。従って、今日でようやく長年の宿題の一つを片づけたことになり、感無量だ。
ぼくが今まで読んだモラヴィアの作品は、"The Time of Indifference"(49), "Two Adolescents"(50), "The Conformist"(51), "Boredom"(60) http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20080108/p1 , "1934"(82) であり、この "Contempt"(54) で6冊目。どれも非常に面白いが、いちばん強烈な印象を受けたのは、"Contempt" と同じく、アンデルセンの『即興詩人』で有名なカプリ島が舞台の "1934" である。青年が二人のそっくりの女に恋をするミステリ・タッチの物語だが、季節といい舞台といい、絶好の緑陰図書だと思う。

- 作者: Alberto Moravia
- 出版社/メーカー: Farrar, Straus and Giroux
- 発売日: 1983/06/01
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- 作者: Alberto Moravia,Tami Calliope
- 出版社/メーカー: Steerforth
- 発売日: 1999/11/01
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…つい脱線してしまったが、"Contempt" に話を戻すと、これは一種のスリラーとしても読めるのではないか。ある日突然、妻なり夫なりが冷たくなる。理由はなぜか分からない。問いつめると、あんたやおまえを軽蔑していると言う。その理由も分からない。好きな本ばかり読んでいて、家庭のことなどろくに顧みないぼくの場合、逆に身に覚えがありすぎて、あんたなんか最低!と言われた日には冷や汗が出てしまいそうだ。
ともあれ、手元にあるモラヴィアの作品ではまだ、"The Woman of Rome" を読み残している。来年の夏が楽しみだ。