ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

William Faulkner の “The Wild Palms”

 3年ぶりにフォークナーを読みはじめたところだが、学力不足の上にボケ気味のため、なかなか進まない。まったく歳は取りたくないもんだ、と実感している。そこで今日は、3年前に読んだフォークナーの『野性の棕櫚』のレビュー(アマゾンに投稿して削除したもの)でお茶を濁しておこう。

☆☆☆☆★] 冷静に考えれば『アブサロム、アブサロム!』がフォークナーの代表作だとは思うが、それにしても、本書における彼の小説技術はじつにみごと。ふたつの独立した物語が平行して描かれ、最後に両者が相補的にひとつの主題を暗示するという手法は、いまでこそ陳腐に思えるかもしれないが、これはなんと1939年の作品なのである。しかも、一方で風にざわめく野生のシュロ、もう一方では大洪水という一貫した舞台背景があり、その演出の仕方が心憎いほどうまい。テーマとしては、ひたすら女のために尽くす男の哀感、といったところかもしれないが、それ以上は研究書でどうぞ。英語はなにしろフォークナーだ、気力で読みましょう。

 …フォークナーもモラヴィア同様、ぼくにとっては夏読書向きの作家。海外の純文学に凝りはじめてから3年前まで、夏になると彼の作品を読んでいた。読破した順にあげると、"Light in August"(32), "The Sound and the Fury"(29), "Sanctuary"(31), "As I Lay Dying"(30), "Absalom, Absalom!"(36), "Go Down, Moses"(42), "The Wild Palms"(39) ということになる。
 『サンクチュアリ』と『死の床に横たわりて』は意外と簡単で、どちらも1日で読みおえたが、『アブサロム、アブサロム!』はたしか1週間近くかかったのではないか。ちょっと目を離すと話が分からなくなり、途中から人物関係その他、メモを取りながら読むことにした憶えがある。暑い、暑いと唸りながら、腐った脳を自虐的に刺激するのにフォークナーはもってこいである。
 …と思って久しぶりに彼の作品を手に取ってみたのだが、いやはや難しい。こんな英語でも、ネイティヴならスラスラ読めるんだろうなと思うと、自分の英語力のなさを痛感せざるを得ない。がさいわい、少し調子が出てきたところなので、これから「自虐的に」がんばらなくては。