ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Intruder in the Dust” におけるフォークナー英語の難しさ

 フォークナーの "Intruder in the Dust" をようやく半分過ぎまで読みおえたところだが、いやはや「老脳」にはまったくしんどい。その英語の難しさについて気づいたことをいくつか書いておこう。
 まずフォークナーに限らず、一般的に言えることだが、最初はどの本も比較的難しい。これはおおむね、人物関係や主筋がまだ見えないことによるが、本書の場合、裏表紙の紹介を読めば、その点はまあ大丈夫…とはいえ、やはり実際に輪郭が見えるまではきつい。
 次に、どの作品でも最初ほど筆者の文体に馴れていないため難しく感じることがある。ぼくはフォークナーに接するのが3年ぶりということもあり、かなり勘が狂っていた。最初の2章がとくに厄介で、語彙もさることながら、とにかく長いセンテンスに閉口した。
 英語の文が長くなる原因は、一般的にはいわゆる後置修飾や複文、接続詞などの多用にあるが、フォークナーの場合、現代英語ではまず考えられないほど長い文が挿入されることも一因。ぼくはときどき、まず( )の中を飛ばして読んでから( )内に取り組むことにした。そのほうが、え、この挿入の前は何だっけ、とまごつかずに済むからだ。
 また、普通なら当然コンマやピリオドがあるべき位置にそれがないため、文が延々と続くという例も非常に多い。これは、「意識の流れ」の技法を用いた文章を読むときのコツで、ここには本当は句読点があるんだな、と考えながら読むしかない。
 あと、いくら裏表紙の紹介が役立つとはいえ、具体的な場面における人物関係がまだよく頭に入っていなかった当初、人称代名詞の he が誰を指すのか紛らわしいことが多かった。が、これはまあ、本書の視点が16歳の白人の少年にあり、それゆえ大半の he がその少年を指していると分かったところで何とかなった。
 以上、愚痴ばかりこぼしてしまったが、今のところ、「意識の流れ」の技法が用いられた箇所はない。それを思えば、また、『アブサロム、アブサロム!』における複雑な人物関係に較べれば、本書はフォークナーの作品としては普通の難易度だと思う。それに音を上げているようでは、ぼくも焼きが回ったなと言うしかない。あと半分足らず、がんばらなくては。

Absalom, Absalom! (Vintage International)

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