ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2008年ブッカー賞ショートリストの予想

 現地時間で9月9日、ブッカー賞のショートリストが発表されることになっている。今年はまだ、去年と違って一冊も候補作を読んでいないが、あちらの情報やシノプシスの斜め読みなどから勝手な予想を立ててみた。
 まず、Steve Toltz の "A Fraction of the Whole"。じつは今これを読んでいるのだが、なかなか面白い。受賞するかどうかはさておき、ショートリストに残ってもよさそうな気がする。William Hill がつけたオッズは下から二番目だが、英アマゾンのリストマニアが作った候補作リストを見る限り、向こうの読者のあいだでは一番人気のようだ。http://www.amazon.co.uk/2008-Man-Booker-Prize-Longlist/lm/R2538ZUGU4DCQ9/ref=cm_lmt_srch_f_2_rsrrrr2 実際、英アマゾンでは文芸部門のベストセラーになっているし、また、米アマゾンのブログ(7月29日付)も本書を強く推している。http://www.amazon.com/gp/blog/A287JD9GH3ZKFY?%5Fencoding=UTF8&cursor=1217747771.923&cursorType=before
 あとは、ほんとに「勝手な予想」。Tom Rob Smith の "Child 44" はかなり面白そう。「スターリン時代のロシアが舞台のスリラー」ということで、"A Fraction of the Whole" と並んで英アマゾンのベストセラー・リストに入っている。
 ただし、Toltz の作品にも言えることだが、ブッカー賞レースでは、ストーリー性に優れているだけでは高い評価は受けない。いわゆる「芸術点」というやつがものを言うことが多い。従って、上の二つはぼくの好みによる「予想」。
 それから、サルマン・ラシュディの "The Enchantress of Florence" は当然残るだろう。ラシュディは今回、ほとんど唯一のビッグ・ネームの作家だから。
 また、ラシュディに次いで名前を知られている John Berger http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20080730/p1 の "From A to X: A Story in Letters" と、さらに、Gaynor Arnold の "Girl in a Blue Dress" も残るかも。どちらも英アマゾンのレビュアー Mister Hobgoblion が高く買っている。昨年の候補作のレビューを読む限り、この人はぼくと意見が分かれることもあったが、ニコラ・バーカーの "Darkmans" を持ち上げ、アン・エンライトの受賞作をけなすなど、わりと評価の一致することが多かった。
 あと一冊か。William Hill のオッズでは、Joseph O'Neill の "Netherland" が一番人気。さて、当たるも八卦当たらぬも八卦、こんなところでどうだろう。