ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Patrick Taylor のことなど(4)

 やっと出張先から帰ってきた。この2日間、携帯を使って書いた日記を訂正したところだが、訂正前の画面を見たときは愕然。携帯の利用の仕方がよく分かっていなかったせいで、すごいことになっていた。
 帰りの電車の中で "An Irish Country Doctor" を読了。最後の farewell party のシーンがとても感動的で、読みおわったときは目頭が熱くなり、あわてて窓の外の景色を眺め、ことなきを得た。これからまだ秀作佳品に出会うことを期待して、「この秋最高の読書体験」だったかどうかは保留にするが、とにかくすばらしい小説であることは間違いない。
 さっそく、いつものようにレビューを書こうと思ったが、旅の疲れで頭がぼんやりして働かない。そこで、昨日おとといの簡単な感想の続きを書くと、とにかく、べつに政治や道徳上の重大な問題を扱っていなくても、日常茶飯の出来事を描きながら、そこに人物の心情をこめたり、人生そのものを浮き彫りにしたりすることで、充分読みごたえのある文学作品に仕上がるということだ。
 裏表紙の紹介によると、作者の Patrick Taylor は本書の登場人物と同じくアイルランドの田舎生まれで、医師の資格を持っている。遅まきながら作者の前書きも読んでみたら、"Stitches: The Journal of Medical Humour" という雑誌に毎月載せていたコラム記事が土台とのこと。もしかしたら、医師として実際に体験したエピソードも混じっているのかもしれない。
 …今日はもう疲れた。疲れたときはバッハだ。これを書きながらゴルトベルク変奏曲のシフ盤を流している。ひさしぶりに聴くが、意外にいいのでびっくりした。第2変奏など、ひとつひとつの音をじっくり紡ぎだすような感じで、それが疲れた心をやんわり解きほぐしてくれる。その点、グールドの旧盤とは対照的だ。あれは元気なときに聴くゴルトベルクかもしれない。

バッハ:ゴルトベルク変奏曲

バッハ:ゴルトベルク変奏曲