ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Karen Kingsbury の “Sunrise”(2)

 この本は Sunrise Series の第1作だが、ぼくは去年の夏、2作目の "Summer" のほうを先に読み、しかもそれが初めてふれた Kingsbury の作品だった。当然それだけ「鮮度」がよかったわけだが、その点を差し引いても本書はいささか見劣りがする。http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20080713
 何よりもまず、"Summer" で大きな感動を生む要因となった赤ん坊がらみの物語に匹敵する山場、泣かせどころがない。あちらは典型的な「難病もの」で、結末の予想は簡単につくのだが、それでも「最後はとにかく涙なしには読めな」かった。「最大の喜びは最大の悲しみの中にある」ことを痛感せずにはいられないからだ。
 ところが、この "Sunrise" では、それぞれの登場人物に何らかの障害が設けられるものの、彼ら彼女たちはいずれもあっさりそれをクリアーしていく。ネタばらしになるので詳細は省くが、ハリウッド・スターとその婚約者が「パパラッチを追い払ってめでたく結婚する」主筋ひとつとっても、「ハードルの低さ」は一目瞭然だろう。
 読む前からハッピー・エンディングであることは分かり切っている。読者もそのつもりで読んでいるし、作者もそんな読者を想定して書いている。それがこのシリーズの、いやおそらく、すべてのキングズベリー作品に共通する成立条件だろうと思う。本質的にはキリスト教の信仰を大前提とした「愛と救済の物語」ゆえ、登場人物は何らかの形で必ず救われる。そういう物語を読むことで読者は心を洗われ、癒される。それが「約束事」だ。
 こんな小説の場合、結末がハッピーだと分かっているだけに、途中の障害は大きければ大きいほどいい。最後はどうせ救われるんだろうと思いつつ、終始ハラハラドキドキ、それどころかホロッとさせられる。そんな筋立ててあって欲しい。その点、"Summer" は文句のつけようがなかった。なにしろ、生まれる前から死ぬと分かっている赤ん坊の物語ということで、得られる「救済」も半端ではない。まさに「最大の喜びは最大の悲しみの中にある」としか言いようがない。
 結局、"Sunrise" は「ハードルの低さ」ゆえにパンチが不足し、全体の展開にしろ、個々のエピソードにしろ、パターンばかり目立ってしまったわけだ。「善意と愛情に満ちた作品」だし、いくつか心温まるシーンがあるだけに残念だ。