ようやく読了したので、本来ならアマゾンに投稿していたときのようなレビューを書くところだが、今日はもう時間がない。レビュー用のメモのつもりでおしゃべり編を先に続けよう。
「どうやら(主人公の)婦人の過去には重大な秘密が隠されているらしい。それが回想を通じて次第に明らかにされ、そこに精神科医が何らかの形でかかわってくるだろう」と3日前に書いたときは、まだ50ページくらいしか読んでいなかったが、この予想は見事に的中。いや、予想を上回る展開だった。
というのも、秘密の開示は当然の成り行きとして、「精神科医が何らかの形でかかわってくるだろう」というのは、じつは期待をこめた「予想」だった。秘密がそれを調べる側の人生と無関係なら、娯楽主体の推理小説で探偵が犯罪を捜査するのと大同小異、文芸エンタメ路線になってしまうからだ。この期待半分の予想を超えたクライマックスで最後は大いに盛り上がり、やや作りすぎの感はあるが、ウェル・メイドな小説に仕上がっている。
で、肝心の秘密だが、さいわい Maggie O'Farrell の "The Vanishing Act of Esme Lennox" と違って、「いったん謎が明かされてみると、そこにはどんな意味があるのだろうと首をひねってしま」うものではなく、「解明に値する謎、解くことによって多少なりとも人生の真実が見えてくる謎」だった。それどころか、それは当初の願いどおり、「人生の苦い真実を思い知らされるような秘密」であり、この意味で本書は "The Vanishing..." よりはるかに優れた文学作品と言える。
若干不満な点もなくはないが、それはレビューでふれることにしよう。とにかく、中盤から加速度的に面白くなり、最近では珍しく一気に読んでしまった。コスタ賞万歳!