ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Forgotten Garden" 雑感(2)

 相変わらず、とても面白い。今のペースだと、あと1日で読み終えられそうだけど、明日は胃カメラを飲むことになっているので、ちょっと無理かな。
 本書の美点はいくつもあるが、今日はミーハー的な興味だけ述べておくと、とにかく舞台が最高にいい。コーンウォールの海辺の村、海を望む貴族の館。館には迷路があり、迷路を抜けると、四方を壁に囲まれた秘密の庭にたどり着く。庭の反対側にはコテージがあり、コテージは海岸から崖を登った高台の上。
 タイトルから『秘密の花園』を連想するのは当然だが、実際、園遊会の場面でホジソン・バーネットが登場したのには驚いた。が、恥ずかしながらぼくは未読。そこで、ぼくの知っている同じような舞台の小説を思い出してみると、まず Iris Murdoch の "The Unicorn"。イギリスのどこかは忘れたが、とにかく海辺の屋敷や断崖が出てくる。本書よりもっとゴシック・ロマン調で、シビれるほど面白かった。

The Unicorn (Vintage Classics)

The Unicorn (Vintage Classics)

 それから、John Fowles の "The French Lieutenant's Woman" にも海辺の町が出てきた。やはり高台から見た海や町、崖の景色には思わずうっとりしたものだ。が、残念ながら映画版は凡作。風景も原作を読みながら想像したほど感動的ではなかった。
The French Lieutenant's Woman (Vintage Classics)

The French Lieutenant's Woman (Vintage Classics)

 貴族の館の庭と言えば、Marcel Pagnol の "My Father's Glory and My Mother's Castle" も忘れられない。本は未読だけど、映画『マルセルの夏』『マルセルのお城』は何度か観た。『――お城』の最後で、主人公が映画撮影のために貴族の館を訪れ、その庭を歩いているうちに昔を思い出す。自分の少年時代の母親が、もしかしたら壁の扉の向こうにいるかもしれない…。あの場面には胸がきゅんとなった。
My Father's Glory and My Mother's Castle

My Father's Glory and My Mother's Castle

 ぼくも小さい頃、伯母の家の近くにあった寺の墓地で、夏になるとよくセミを捕ったものだが、その墓地を夏休みなどに訪れると、心はすぐあの日に戻ってしまう。大人になった自分と、少年時代の自分が重なり合う。この "The Forgotten Garden" にも同じような場面があり、本当に懐かしかった。