ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Still Alice" 雑感(1)

 新年度が始まり何かと多忙、今日もぐったり疲れてしまった。こんなときは分厚い本や難解な作品は敬遠するにかぎるので、300ページ足らずで英語が簡単そうな Lisa Genova の "Still Alice" に取りかかった。現時点でニューヨーク・タイムズのTrade Paperback 部門ベストセラー第12位。たしか今年の初めから同リストの常連である。
 シノプシスにざっと目を通して注文したはずだが、例によって手元に届いたときはどんな話か失念。何の予備知識もなく読みはじめたが、ううん、これは「つらい小説」だ。ハーバード大学の女性教授が学会の発表中、突然、ある言葉を思い出せなくなる。そんな経験は初めて…というエピソードと、"Still Alice" というタイトルから、大まかな展開と結末はピンときた。ジョギングの帰りに道が分からなくなる。メモ書きの意味が不明…とくれば直感はますます正しい。
 ぼくも年々、物忘れが激しくなり、今朝は珍しくケータイが鳴る前に目を覚ましたのはいいが、服を着終わったころにはケータイをどこへ置いたかもう忘れてしまい、目覚ましが鳴るまで思い出せなかった。そんなぼくだけに本書の内容は切実で、電車の中で読みふけり、あとでかみさんや娘に途中経過を報告している。二人とも少し関心があるようだが、それよりおそらくパパのことが心配なのだろう。
 今のところ大筋は直感どおりで、これは最初の数章とタイトルから誰でも結末をだいたい予想できる小説だ。…などと断言していいかどうか多少不安だが、たぶん大丈夫だろう。では詰まらないか、というとさにあらず、むしろぐんぐん引きこまれてしまう。それは小説としての面白さからなのか、いずれ今の自分を失い、愛する人々と別れなければならない運命にある主人公への同情からか、それとも、そんな運命に主人公を追いやった難病への関心のせいなのかよく分からないが、おそらく3つの要素が相まって本書の牽引力となっているような気がする。さて、これからも予想どおりの展開なのだろうか。