ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Good Thief" 雑感(2)

 いやあ、これは先がちっとも読めない。この点、先週読んだ Lisa Genova の "Still Alice" とはまったく対照的だが、ぼくはどちらかと言えば筋書きが分からないほうが好きだ。
 展開の予測がむずかしい原因の大半は、(自分のボケを棚に上げると)本書が「巻きこまれ型」の冒険小説だからである。つまり主人公が数奇な運命に翻弄され、心ならずも日常生活を離れて数々の冒険に乗り出すというタイプ。とりわけ少年が主人公の場合、そんな物語が多いような気もするが、これほど典型的な「巻きこまれ型」に出会うのは久しぶりだ。その昔、腐るほど読んだエリック・アンブラー風の冒険スパイ小説以来だろうか。
 昨日も書いたように、本書の主人公の孤児はまず、兄と称する詐欺師に引き取られ、その詐欺師のもとで窃盗やインチキ商売、墓荒らしなどに首を突っこんでしまう。修道院育ちの少年は愛情に敏感で優しい心の持ち主だが、度胸もあり、今日読んだところではかなり積極的に詐欺師の犯罪を手伝う。だから "The Good Thief" なのかと思っていたら、何と詐欺師は表舞台から退場(あとでまた出てくるかもしれないけど)。ううん、どんな展開になるか本当に分からなくなってきた。
 殺人や暴行など血なまぐさい活劇が多いのも本書の特徴のひとつだが、それより、へんてこりんなエピソードのほうがぼくは好き。暖炉の煙突からせむしの小男がぬっと姿を現わし、また煙突の中に消えていく話とか、昨日もふれたけど、墓から死体を掘り出してみたら、何とその死体が息を吹き返す話など、な、なんだこりゃ!と目を白黒させられる。
 どちらもあとで合理的な説明がなされ、小男も死んだ男もそれぞれ活躍の機会を与えられるのだが、少年が詐欺師と別れて別の男の世話になりそうな今、これから2人の脇役がいったいどんな風に主筋と結びつくのか見当もつかない。それとも、単なるチョイ役に過ぎないのか。いやほんと、目が離せません。