ようやく半分を過ぎたところだが、これは予想に反してちとむずかしい。まず語彙レヴェルがわりと高く、最近読んだ本の中では一、二を争うほど。今日も仕事の合間に読んでいるときはボーっとして頭に入らず、帰宅後、気合いを入れ直して何とかノルマを達成した。
それから、テーマの提示が今のところ間接的で、気をつけていないと作者の意図がつかみにくい。もちろん、昨日に引き続き、いかにも西部劇らしいシーンがあるのはとても楽しかった。自動車整備工の少年が荒馬を見事に乗りこなすシーンは、『ジュニア・ボナー 華麗なる挑戦』ばりの迫力があるし、大雨が降って洪水になったところで殴り合い、ガンファイトと文字どおり風雲急を告げる展開。これまた西部劇には欠かせないシーンである。
ただ、こういう派手なアクション、あるいは、昨日ふれたカミツキガメのユーモラスなエピソードの裏にあるものは、はたして何なのか。最初、ボケ気味で疲れている頭にはどうもピンとこなかったが、中盤を過ぎたところで振り返ってみると、以上はたぶん、アメリカ人にとっては心の原風景だろう。そこに置かれた主人公が新作の書けない作家で、この作家は列車強盗の老人が元妻と再会するのを手助けしようとしている。こういう舞台背景と設定に作者の意図が隠されているような気がする。
同じ西部小説で言えば、今のところ Cormac McCathry の "All the Pretty Horses" のほうがいい。といっても、あれを読んだのはずいぶん昔のことで、今のように分析的な読み方をせず、ただ読書を楽しむだけだったから(読書とは本来、そうあるべきだ)、内容はあまり記憶に残っていないのだが、全体を通してたしか抒情的ないいムードが漂っていたような気がする。
うろ憶えの本と比較しても仕方ないが、とにかく本書はまだ基調が鮮明ではない。ただどうやら、アメリカ人の原風景の中で主人公が心の救いと復活を求め、老人も心の平安を求めていることはたしかなようだ。さて、どうなりますか。