やっと読みおえた。例によって今までの雑感をまとめておこう。
[☆☆☆★] 20世紀初め、まだ西部開拓時代のなごりをとどめる
アメリカの原風景を舞台に、心の救済と復活をしみじみと描いた佳編。処女作がベストセラーになったものの、新作が書けずに鬱屈した毎日を送っていた作家が、大昔別れた元妻と再会したいという老人に付き添って旅に出る。
ミネソタの田舎町から
カンザスの観光牧場、
オクラホマ、
ニューメキシコ、そしてカリフォルニアの果樹園。この長い旅の途中、野宿や荒馬乗り、殴り合い、馬に乗っての追跡、そしてガンファイトと西部劇にはお決まりのシーンが連続して楽しい。が、これは決して派手なアクションが売りの冒険小説ではないし、事実、その冒険も手に汗握るほどではない。ここで中心にすえられているのは、心の奥にあるわだ
かまり、胸のつかえを必死に取り除こうとしている人間の姿だ。それが西部劇の風景の中で描かれる。感傷を抑えた筆致ながら、もがき苦しんでいる男たちの感じとる友情や愛情の意味もしっかり伝わってくる。たぶん
アメリカ人には切なくて懐かしい、ハートウォーミングな作品だろう。英語の語彙レヴェルは比較的高いが、難解というほどではない。