ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Northern Clemency" 雑感(4)

 第2部は今のところ、ロンドンからシェフィールドに引っ越してきた家族のメンバーが主役。第1部にも登場した面々だが、今ふりかえっても、引っ越しの実況中継の意味がよく分からない。何らかの伏線とも考えられるが、どうも単なるダイグレッションだったような気がする。
 この第2部でも饒舌ぶりは健在だ。当初の主筋は新しい学校に通いはじめた子供たちの話で、転校生ゆえの戸惑いや違和感などが示される。ぼくも小学生のころ転校の経験があり、ここで描かれているような教室内外の風景にはわりと親しみが持てるのだが、ちょっと面食らったのは、クラスメートのそのまた友人の父親が炭坑の構内を視察するくだり。こんな寄り道(?)がないと小説としてのふくらみに欠けることも確かだが、それも程度問題で、最近のスピーディーな展開の小説に馴れた感覚で言うと、いささか退屈。でもこれは、好みの問題かもしれない。
 ただ、青春小説かなと思って読んでいたら、一見関係なさそうなエピソードが出てきたりして、ボケと疲労の二重苦の頭では、この小説のテーマがまだまだ杳としてつかめない。第1部は夫婦喧嘩に端を発したドタバタ喜劇が読みどころで、ほかにも、年頃の息子や詮索好きな近所の奥さん連中の話など、ユーモラスな場面が混じっていた。饒舌とユーモアが本書の特徴だということは分かるのだが、さて、第1部と第2部はどんなテーマでつながっているのやら…。
 まあ、くだんの息子と、越してきた家の娘がどうやら何らかの関係を持ちそうだし、奥さん連中のおしゃべりも再開したところなので、今後の展開に期待しましょう。