ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Sarah Stonich の "These Granite Islands"

 風邪の熱でボーっとしているあいだにオレンジ賞の発表があり、予想どおりと言うか期待どおり、Marilynne Robinson の "Home" が栄冠に輝いた。全米図書賞、全米書評家(批評家)協会賞と落選続きだったので、文字どおり三度目の正直ということになる。
 ぼくはようやく "The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society" を読み終わったところで、"Home" に取りかかるのは時間があれば明日から。"The Guernsey Literary...." のレビューを書く余裕もないので、今日も昔のレビューでお茶を濁しておこう。

These Granite Islands: A Novel

These Granite Islands: A Novel

[☆☆☆] 未知の作家の作品を読むのはいつも楽しいものだが、本書も途中まではなかなか目が離せない。脳卒中で倒れた老婦人が意識を回復した後、駆けつけた次男相手に60年以上も昔の夏の思い出を語る。今は亡き夫との不和、夫が息子たちを連れて湖中の島に出かけた後に出会った女友達との交流。その友人は不倫の最中で…このあたりまでは、けっこうサスペンスがあって面白い。しかし、やがて主人公の回想は、夫や長男の死など、家族の話題へと中心が移っていく。著者としては、通俗的なメロドラマに堕するのを恐れたのだろうが、むしろ、ロマンスに徹したほうがもっと面白い作品に仕上がったのではないか。夏の思い出がせっかくいい味を出しているだけに残念だ。英語は即物的な描写と叙情詩的な表現が混在する文体だが、いずれにしても平易で読みやすい。