ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Dangerous Laughter" 雑感(3)

 あっさり読了できるはずだったが、パソコンの打ちすぎのせいか首筋に激痛が走り、最後の第3部 "Heretical Histories" は1日1話のペース。今日になってやっと読みおえた。まだレビューをまとめるゆとりはないので、備忘録の続きを書きしるしておこう。
 第10話 "Here at the Historical Society" は、ある町の歴史学会が過去の記録を収集・展示する話。それだけならどうってことはないが、収集の対象はなんと、キャンディーの包み紙のようなガラクタ類にまで及ぶ。つまり、過去を記録しようとする熱意がモノマニア化し、論理がいつのまにか非論理の世界に移行する。現在とは過去が新しくなったもの、という歴史観も示されるが、要は正統が異端化する話。
 第11話 "A Change in Fashion" もこっけいなほど極端な話で、女性が身体を覆い隠すファッションが流行したあげく、奇抜この上ない衣服が出現する。ここでも現実は非現実化し、論理は非論理化している。
 第12話 "A Precursor of the Cinema" は、エジソンリュミエール兄弟によって映画が発明される以前、映画の先駆となった媒体の開発物語。絵に描いたハエが飛びたち、絵中の人物がダンスをはじめ、やがて現実と絵画の世界が溶解…というように、ここでも非現実化、非日常化、非論理化がテーマ。
 第13話 "The Wizard of West Orange" は、日夜実験に明け暮れる発明家たちとその発明品を日記スタイルで描いたもの。触覚再現機とでも呼ぶべき不思議な機器に代表されるように、人間の新たな可能性の創出、未知の世界の開発…といえば聞こえはいいが、どこか狂っている。何のための発明なのか説得力がないからだ。つまりここでも論理は非論理化し、現実は非現実のものとなっている。