ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Belong to Me" 雑感(2)

 職場は今や「農繁期」たけなわで、Marisa de los Santos の "Belong to me" も、英語は簡単なのにカタツムリの歩みでしか進まない。それでもまあ、何とか新しい駄文を綴れそうなところまでたどり着いた。
 前回、「何となく物語が透けて見えるのが気にかかる」と書いた本書だが、やっぱりおおむね予想どおりの展開だ。フィラデルフィアの郊外に引っ越してきた Cornelia の隣人はいかにも意地悪そう。ところがじつはその隣人、癌にかかった親友のために献身的に努力している。…という設定から、Cornelia と隣人はいずれ打ち解けあうに違いないとわかる。で実際、その瞬間が訪れるのだが、「物語が透けて見える」割にはけっこうハートウォーミング。わかっちゃいるけど読みやめられない、というやつだ。
 そこで思い出したのが、往年の名画『フィラデルフィア物語』。

フィラデルフィア物語 [DVD]

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 Santos の処女作 "Love Walked In" で何度か引き合いに出されていたし、本書にも言及がある。その昔、あれを初めて観たとき、ケーリー・グラントキャサリン・ヘップバーンの元夫役で出てくることから結末は「透けて見え」たものだが、それでも充分楽しかった。本書も同様で、文学的な深みこそないが、「愛の賛歌をテーマにした、なかなかゴキゲンな小説」であり、重箱の隅をつつかず、作品のノリに合わせて楽しむのがいちばんだと思う。
 ほかにもう一人、 Cornelia と仲よくなりそうな女性がいるのだが、その息子と、Cornelia が第1作で世話をした娘が出会い、二人は親密な仲になる。息子は母と別れた父を探しており、娘も父親探しに協力…。こちらもハートウォーミングな話になりそうだ。