ほんとうは2,3日もあれば楽勝の本だが、諸事情のため昨日やっと読みおえた。宮仕えのつらいところだ。グチはさておき、さっそくレビューを書いておこう。
[☆☆☆★★] 古き佳き
アメリカ映画を思わせる人情ドラマの佳作。主人公は前作同様、幼い娘なみに小柄な女性コーネリアで、舞台もやはり
フィラデルフィア。コーネリアが郊外の住宅地に引っ越してきて二人の隣人と知りあう。やがてコーネリア夫婦をはじめ、三家族とその周辺のあいだでさまざまな事件が発生。親友の死、離婚、子育ての苦労、隣人同士の衝突、父親探し、ボーイ・ミーツ・ガール、待望の出産…家庭小説、青春小説、恋愛小説などの諸要素が日替わりランチのように出てきてかなり楽しい。その根底に流れているものは愛情や善意、信頼関係で、皮相な人物も登場するが、主な人物はすべて善人。それゆえ、予想外の複雑な事情が明らかになっても、最後は一件落着するにちがいないと物語が透けて見えるのが玉に瑕だが、それぞれの場面にあふれる真情がハートウォーミングでほろっとさせられる。前提としている
ヒューマニズムそのものを掘り下げた作品ではないので文学的な深みはないが、そんなふうに斬り捨てるよりも、人情のありがたさを思い出させてくれる小説として楽しむのが大人の知恵というものだろう。英語も標準的で読みやすい。