やっと梅雨が明け、いよいよ夏到来! この季節、日本の出版社では「○○文庫の夏」などと称して読書特集を組むところがあるが、あちらでも毎年、Richard & Judy Book Club や英米アマゾンなど、ただし日本と違って新刊を中心に推薦図書をリストアップしているのが目につく。
その中から選んでもいいのだが、貧乏金なしのぼくはペイパーバック専門なので、今日現在、ニューヨーク・タイムズ紙の Trade Paperback 部門ベストセラー第11位、Elin Hilderbrand の "A Summer Affair" に取りかかった。去年の今ごろはタイトルに summer のついた本を4、5冊読んだものだが、今年は本書だけにしようと思っている。
Hilderbrand の作品に接するのはこれが初めてだが、読みはじめてすぐ、なかなか手慣れた大衆作家だなと思ったので米アマゾンで検索すると、旧作はどれも好評のようだ。ともあれ、ひと夏の恋といえば、激しく燃え上がり、そしてはかなく消えるもの、と昔から相場が決まっている。読む前から展開も結末も見え見え…とは思ったのだが、いつもおカタイ小説ばかりだと息が切れる。
で実際、ストーリーはおおむね想定内。が、ぼくはこの手のメロドラマも大好きなのでクイクイ読める。舞台はナンタケット島で、ともに配偶者と子供のいる男と女が不倫関係におちいる。ただ、二人の関係が始まったのは秋口で、今読んでいるのは翌年の春の話だから題名とは違う。もしかしたら、またべつの affair があるのかもしれない。
技法上いくつか気のついた点もあるが、やはりあちらの小説だなと思ったのは、カトリック信者である女が情熱を燃やす一方、自責の念に駆られて神父に罪を告白するくだり。こんな設定は、ホレたハレただけの世界である日本の小説ではまずあり得ない。この点を深く掘り下げれば、いくら陳腐なテーマとはいえ純文学になるのだが、Hilderbrand は不倫話をどんどんドライブしていくだけ。大衆作家のゆえんだと思う。