ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Wolf Hall” 雑感(2)

 職場が「農繁期」に入り、思うようには進まないが、これを書いたあと寝るまでに何とか第3部を読みおえられそうだ。全体の印象は前回とあまり変わらない。歴史小説が大好きな、あるいはこの時代に関心のある読者ならいざ知らず、門外漢のぼくには今のところ、期待したほど面白い小説ではない。
 時代背景の見通しは相変わらずいい。なにしろ、主人公がクロムウェルと知って、清教徒革命で有名なあのオリヴァー・クロムウェルのことかと最初は勘違いしていたくらいドジなぼくでも、ヘンリー8世をめぐる結婚問題がすっと頭に入ってくる。主人公トマス・クロムウェルが庇護者の大法官トマス・ウールジをはじめ、トマス・モア、アン・ブリーン、さらにはヘンリー8世と直接言葉をかわす。たぶんフィクションも混じっているのだろうが、大きな流れはどうやら史実に沿っているようだ。
 …などとエラそうなことを言えるようになったのは、森護の『英国王室史話』の関連箇所を併読しているからで、この『史話』は非常にスグレモノである。今まで一度も目を通したことがなかったとは、まことにお恥ずかしい次第だ。
 ただ、『史話』にも出てこないのはクロムウェルの詳細な人生の軌跡で、この小説は、ぼくほど不勉強でなければ誰でも知っている有名な事件を扱いながら、おそらく今まで誰も焦点を当てたことのない人物を主人公にすえている点が目新しいと言えるかもしれない。イギリスに留学したことのある友人に問い合わせたところ、「あまりよく憶えてないけど、(日本の)大学の授業でヘンリー8世がらみで聞いたことがある」とのこと。まあ、著名な人物にはちがいないが、それにしてもオリヴァーほどではないだろう。
 …今日も「マクロな視点」の話だけで終わってしまったが、家庭人、私生活中心の「ミクロな視点」はもちろん、この「人物に関する最も本質的な問題」も徐々に見えてきている。それはまた後日。