ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Last Night in Twisted River" 雑感(1)

 つい最近 John Irving の新作が出たことを知り急遽入手、予定を変更して取りかかった。こんな調子だから、いつまでたっても積ん読の山が残っている。
 アーヴィングの本を読むのは "The Fourth Hand" 以来で6冊目。まだ9冊も読み残しているので熱心なファンとは言えないが、それでも今まで読んだ作品にはどれもノックアウト。とりわけ、"The Hotel New Hampshire" は(中身こそあまり憶えていないが)大のゴヒイキだ。
 前置きが長くなったが、もう少し続けよう。アーヴィングの作品と言えば、最初は何がテーマなのかサッパリわからないが、とにかく面白い。いったいどんな収拾をつけるんだろう、と気になるほど話がどんどん広がり、無我夢中で読みふけってしまう。そんな印象が強く残っているので、こんどはどれほど奇想天外なストーリーで楽しませてくれるのだろうと、相当な期待感をもって読みはじめた。
 フタをあけた結果は、ううん、まずまず面白い、と言ったところかな。期待したほどではない。まだ第2部の途中までしか読んでいないので核心部分は始まっていないようだが、それでも旧作だったら、とうの昔に物語の渦中に引きこまれているところだ。
 第1部の舞台は1954年、ニューハンプシャー州の山中の町。木こりたち相手に飯場を営んでいる父親の12歳の息子 Daniel が主人公。Daniel の親友が川で転落死する場面から始まり、父親と大柄のインディアン女がことに及んでいる最中、父親が熊に襲われているものと錯覚した Daniel が女をフライパンで殴り殺してしまう、というのが最大のハイライト。Daniel の両親の出会いや母親の死など、例によって話があちこちに飛びながら進み、折にふれてコミカル、ちょっぴりエロな場面が混じる。やたら重たい女の死体を片づけるシーンはブラック・ユーモアたっぷりで、ドキドキしながら笑える。
 …とまあ、面白いことは面白いのだが、ああ、アーヴィング・タッチですねえ、とつい思ってしまうのは、まだまだ夢中になっていない証拠。今後を期待しましょう。