毎年恒例のニューヨーク・タイムズ紙選ベストフィクション5が発表されたとき、これは表紙をひと目見たとたん読みたくなった作品である。

- 作者: Jeannette Walls
- 出版社/メーカー: Scribner
- 発売日: 2009/10/06
- メディア: ハードカバー
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その昔、たしか片岡義男だったと思うけど、最初の1ページ目に動きがある小説は面白い、とくに車が出てくるやつほどいい、という趣旨のことを書いていた。その小説とは、ハードボイルドをはじめミステリのことだったように記憶しているが、これは案外、純文学にも当てはまる法則かもしれない。少なくとも、「本は見かけ」よりは確実なような気がする。
たとえば、先週の日曜にやっと読みおえた Colm Toibin の "Brooklyn" も、主人公の娘が家の窓から姉の帰宅するところをながめているシーンから始まる。ぼくはそれを読んだ瞬間、お、これはイケルと思ったものだが、事実、その後もクイクイ読める作品で大いに満足した。この "Half Broke Horses" も "Brooklyn" に勝るとも劣らぬクイクイ度抜群の秀作である。おまけにこれは、田舎者のぼくの大好きなローカルピースで、こういう大自然が舞台の地方色豊かな作品には心がなごむ。
…と思っていたら、読み進むうちに主人公のリリーは、「数々の試練を不撓不屈の精神で切り抜ける…意志堅固で忍耐づよい、ときに厳しい野生の女」とわかる。その「タフな生き方はひ弱な現代人に活をいれるもの」とレビューには書いたが、「ひ弱な現代人」とは何を隠そうぼくのこと。ううん、何だか知らんがガンバラナクチャと思った。
Jeannette Walls は、あの評判の高い06年のアレックス賞受賞作、"The Glass Castle" の作者だが、ぼくは恥ずかしながら未読。ぼくの場合、この「恥ずかしながら未読」という作品があまりにも多いので、積ん読の山を少しでも切り崩さないといけない。これが当面、ガンバラナクチャの目標となりそうだ。