先週は珍しく職場で仕事に励んだせいか、家に帰るとぐったり。この日記に駄文を書くのが精一杯で、本はほとんど読めなかった。もう年も年だし、早いとこ宮仕えをやめてボンヤリ暮らしたいのだが…。
閑話休題。昨年の全米図書賞受賞作、Colum McCann の "Let the Great World Spin" のペイパーバック版が手に入ったのでボチボチ読みはじめた。ここ数年、同賞は候補作なら何冊か読んだことがあるが、受賞作に取り組むのはなんと04年の "The News from Paraguay" 以来初めて。読まず嫌いの理由は、同書がピンとこなかったのと、以後、この賞には何となく大家の顕彰を旨とした権威主義的な印象が感じられたからだ。
この Colum McCann が大家と言えるかどうかはわからない。昨年、本書がまだハードカバーしか出ていなかったころ、たまたま書棚にあった旧作短編集 "Fishing the Sloe-Black River" (93) を代わりに読んでみた。「喪失感や挫折感、逆にそれらを解消しようとする衝動」など、「人生のいろいろな局面で感情が一瞬結晶化する話を集めたもの」だったが、あれはどうやら新人時代の作品だったらしい。その後の作品はいっさい未読で、本書が全米図書賞を取らなければ、上の短編集もずっと積ん読のままだったはずだ。
まだやっと第1部を読みおえたところだが、今のところ正直言って、物語性という点ではクイクイ読めるほどではない。また、テーマそのものも、勘の鈍いぼくにはさっぱり不明。が、よくわからない反面、何だろ何だろ、という興味に惹かれるし、四本ほどある大きな流れがどうやら一つに収斂しそうで、これからどんな全体像となるのか楽しみだ。
流れの一つは、ニューヨークの今はなき世界貿易センターの新築当時、ツインタワーを綱渡りでわたる男の話。何だこりゃ、とプロローグで読者を惹きつける効果はあるが、男について詳しく述べられるのは最後の章。分量はちょっとなのにハラハラさせられる。
中間に三つの流れがあり、一つは、ダブリン生まれの兄弟がニューヨークに移住、青少年時代のブラピのような弟について兄が物語る。ダブリン時代の母親の話には、上の短編集と同じような静かな哀感が漂っている。ある宗教団体に入った弟はニューヨークのスラム街で売春婦たちに休憩場所を提供する一方、ヘルパーの仕事につき、やがて老人ホームの看護婦と恋仲に…。猥雑なスラム街の風俗や弟の正義感・反骨精神がよく書けているし、教団が課した独身の掟と恋愛の板ばさみに悩む姿もいい、と思っていたら突然…。
ううん、こんな調子でネタをばらして行っていいのかなあ。尻切れトンボの文字どおり雑感になってしまったが、もう眠くなったので今日はこの辺で。