ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Lark & Termite" 雑感(4)

 友人から、「農繁期、がんばれ」というメールをもらった。このブログを読んでくれた感想だが、ここでひとまず返信すると、相変わらず貧乏ひまなしですわ。先週末も今日も日ごろの給料ドロボー生活を返上、せっせと仕事に励んでいた。
 おかげで遅々として進まない本書だが、それなりに発見はある。人は時に人を裏切るが、本は決して人を裏切らない、という単純な事実もそのひとつ。裏切られて唖然呆然とするのが実人生なら、いつどんな時でも同じ内容が待っているのがフィクションの世界。その解釈に多少ブレはあっても、それは受け取る側の問題であって、本そのものは厳然として目の前に存在している。電車やバスの中で本書を手に取るたびにそう思う。いや、疲れてますな。
 小説における意外性の続きを書こう。たとえばミステリがいい例だが、さりげなく張られている伏線に気づかぬまま、ハテこの先どうなるのかというサスペンスフルな展開が続いたあと、結末でエっと驚く。そんな意外性がまずひとつ考えられる。
 それから、小説を読むことで人生における意外な真実を知らされる、という場合もあると思う。ぼくの乏しい読書体験で言えば、ドストエフスキーメルヴィルの作品などがその代表例。善から悪が生まれるなどという「意外な真実」を知ったのも『悪霊』や『白鯨』を読んだおかげだが、その意味についていくら考えても、その意外性が失われることは断じてない。それどころか、ますます驚くべき恐ろしさを感じる。
 で、本書の場合、上の二例のような意外性は今のところない。相変わらず「すべて定石どおりの展開」である。けれども駄作ではない。時間があれば、安んじてその展開に身を任せられるはずだ。そういう意味でも、これは「決して人を裏切らない」本と言えるだろう。