ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Bishop's Man" 雑感(5)

 週が明けて出勤、仕事をしているふりだけだが疲れた。それでも本書はまあ、明日には読了できるかな、というところまで読み進んだ。
 今回は残念ながら、ストーリー的には正直言ってトーンダウン。もっとドラマティックな展開で大いに盛り上がるのかと期待していたら、逆にテンションが少し下がってしまった。それとも、嵐の前の静けさというやつで、これからもうひと山あるのかな。
 ただし、主人公の司祭がホンジュラスで遭遇した事件の詳細は判明。雑感(3)で、「要するに、自分は聖職者だが、本当に聖職者にふさわしい人間なのか、という疑いがこの司祭にはある。その疑いはどうやらホンジュラス事件に発しているよう」だ、と予想したとおりだった。ネタをバラさない程度に書くと、司祭が感じている人間としての存在意義に関する疑念は決して哲学的、抽象的なものではなく、あくまでも道徳的、倫理的なものである。その重みがこちらの胸にぐっと迫ってくるという意味では、決して「トーンダウン」とは言えない。
 前回、「ぼくはこの司祭が自分の心と向き合う姿に感動を覚える」と述べたが、さらに付け加えると、司祭が自分の不完全を十分に自覚した上で、スキャンダルを起こした他の神父や、それをもみ消そうとする司教の偽善に憤りを覚える姿も感動的である。ぼくとしては、そういう「自分を棚上げしない正義感」に駆られた対決をもっともっと書いてほしい。その対決が今のところ空振りに終わりそうなので、「テンションが少し下がってしまった」わけだが、これから最後の盛り上がりを大いに期待したい。