ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Cutting for Stone”雑感(1)

 現在、ニューヨーク・タイムズ紙の Trade Paperback 部門でベストセラーとなっている Abraham Verghese の "Cutting for Stone" を読みはじめた。先ほど検索すると第8位だったが、リストに載っているのを見て注文したのが2月の末だから、かれこれ半年近く人気を保っていることになる。もっと息の長い作品もあるが、例によって内容も調べず、カバー絵が気に入ったというだけで飛びつき、今ごろになってようやく取りかかった。
 これは長い。650ページ以上もある! 最近ずっとカタツムリ君なので、今度もけっこう時間がかかりそうだ、と思いつつボチボチ読んでみると、うん、さすがベストセラーだけあって、なかなか快調な滑りだしですね。歴史小説、大河小説、家庭小説…といくつかレッテルが思いうかぶ。いずれにしろ、じっくり腰をすえた悠々たる筆致で、さあ波瀾万丈の物語の始まり始まり、という感じだ。
 1954年、エチオピアの首都アジスアベバにあるミッション系の病院で、シスターの Mary が出産(!)する場面にまず惹きつけられる。生まれた双子のうち兄の Marion が50年後、波乱に満ちた母親の、あるいは父親や自分たち子供の人生を再構成するという展開のようだ。Marion は外科医だが、彼の「父」Thomas も外科医で、インドからアフリカへ渡る船上で Mary を見そめ、二人はやがて同じ病院で働くようになる。ところが、ある日突然、Mary が妊娠していることがわかり、Thomas は生まれた子供たちの父親と見なされるようになるが…
 ちょっと読んだだけで早くも複雑な事情がありそうな気配濃厚。「さあ波瀾万丈の物語の始まり始まり」です!